A.結論として「人時生産性」を正しく把握することです。具体的には、顧問先別に作業時間のデータを集計し、どの業務の生産性が高いのか、顧問料が作業時間に見合っていない顧客がいないかを可視化します。これにより、採算の合わない業務の効率化や適切な価格交渉の判断が可能になり、事務所全体の粗利を根本から改善できます。
社労士事務所の経営において、「売上は上がっているはずなのに、手元に利益が残らない」という悩みは非常に多く聞かれます。
その原因の多くは、各業務や顧問先ごとに「どれだけのコスト(時間)がかかっているか」が不明確なまま運用されていることにあります。
船井総合研究所が推奨する粗利改善の結論は、「人時生産性」を正しく把握することにあります。
具体的には、顧問先別に作業時間のデータを集計し、どの業務の生産性が高いのか、顧問料が作業時間に見合っていない顧客がいないかを可視化することです。
1. 粗利改善の指標「人時生産性」とは
社労士事務所の最大の原価は「人件費(時間)」です。
売上から外部コストを引いた粗利を、その業務に投下した総時間で割った「人時生産性(1時間あたりの粗利額)」を指標に据えることが、コスト管理の第一歩となります。
▼「忙しい=利益が出ている」ではない
手間のかかる手続き業務で一日が終わっていても、それが低単価であれば人時生産性は上がりません。
▼見えない原価の可視化
顧問先ごとの月次ルーチンだけでなく、突発的な電話相談や複雑な助成金申請にどれだけの時間を割いたかを把握することで、実質的な採算が見えてきます。
2. 顧問先別・業務別の採算性を分析する
人時生産性を算出するためには、職員一人ひとりが「どの顧客に、何の業務で、何分使ったか」という工数データを蓄積する必要があります。このデータを分析することで、以下の課題が明確になります。
▼不採算顧客の特定
「顧問料は安いのに、毎日のように電話相談があり、かつ手続きが複雑」といった、作業時間と報酬が乖離している顧客を特定できます。
▼高収益業務の発見
逆に、短時間で高い成果が出せる(=人時生産性が高い)業務が浮き彫りになります。これにより、事務所としてどの業務を強化すべきかという戦略立案が可能になります。
3. データに基づいた「効率化」と「価格交渉」
人時生産性が可視化されると、具体的な改善アクションを「勘」ではなく「数値」に基づいて実行できるようになります。
▼業務プロセスの効率化
生産性が著しく低い業務については、マニュアルの不備や、クラウドシステムによる自動化の余地がないかを検討します。
▼適切な価格交渉と契約見直し
作業時間が報酬に見合っていない顧客に対しては、蓄積したデータをもとに「これだけの工数が発生しているため、顧問料の改定をお願いしたい」という客観的な交渉が可能になります。また、あまりに採算が合わない場合は、勇気を持って契約内容を縮小する判断も必要です。
結論
人時生産性は事務所の「健康診断」である
社労士事務所の粗利改善において、安易な値上げや人件費の抑制は逆効果になることがあります。
まずは「人時生産性」を可視化し、事務所内の時間の使い道を徹底的に管理することが、健全な高収益化への最短ルートです。
どの顧客にどれだけのコストをかけ、どれだけの利益を得ているのか。
この「当たり前」の数値を把握し、改善し続ける仕組みを構築することこそが、強固な経営基盤を持つ事務所へと進化するための絶対条件となります。



