A.税理士業界の深刻な採用難を突破するには、単なる「条件改善」に留まらず、事務所の「付加価値」を再定義することが重要です。求める人物像を明確化した上で、DX化による業務効率化や、リモートワーク等の柔軟な働き方を提示し、専門業務に集中できる環境を整えることが、優秀な人材に選ばれるための鍵となります。
1. ターゲットの再定義とポテンシャル採用への転換
多くの事務所が「実務経験のある有資格者」を追い求めていますが、極度の売り手市場においてその層に固執することは採用難を加速させます。まずは、求める人物像を「即戦力」から「ポテンシャル層」や「特定の強みを持つ人材」へ広げることが不可欠です。
例えば、税理士試験合格を目指す若手層に対しては、試験休暇の充実や専門学校との両立支援を明確に打ち出します。また、結婚・育児で離職した「潜在税理士・経験者」や、ITリテラシーの高い未経験者、さらには豊富な経験を持つシニア層までターゲットを広げます。大事なのは、「誰でも良い」ではなく「自所のどの業務を、どの属性の人に担ってもらうか」というパズルのピースを明確にすることです。
2. DXとアウトソーシングによる「高付加価値な職場」の構築
優秀な人材ほど、単調な入力作業やアナログな業務フローを嫌います。採用力を高めるためには、事務所内のDX化(RPA、AI-OCR、クラウド会計の導入)を徹底し、「職員が本来注力すべき経営支援やコンサルティング業務に集中できる環境」を整えることが、最大の魅力付けになります。
また、記帳代行などの定型業務を外部のアウトソーシングサービスへ積極的に切り出すことで、職員の過度な残業を抑制し、ワークライフバランスを向上させることが可能です。「この事務所に入れば、最新のツールを使いこなし、付加価値の高いキャリアが積める」という実感を求職者に与えることが、他事務所との差別化に直結します。
3. 透明性の高い評価制度とキャリアパスの提示
優秀な職員が定着し、また応募してくるポイントは「自身の成長と評価が連動しているか」にあります。担当件数に応じたインセンティブだけでなく、顧問先への提案実績や業務改善への貢献度など、多角的な評価基準を明文化しましょう。
特に若手層は、5年後、10年後の自分がどのような役割を担っているかという「キャリアパス」を重視します。「巡回監査のプロを目指すルート」「資産税・承継コンサルに特化するルート」「マネジメントを担うルート」など、複数の成長モデルを提示することで、将来への不安を払拭し、意欲の高い人材を惹きつけることができます。
4. 採用広報の強化と選考スピードの極大化
優秀な人材は複数の事務所を併願しており、選考スピードが勝敗を分けます。応募から面接、内定までを1週間以内で行うスピード感が標準となりつつあります。
同時に、事務所のWebサイトやSNSを通じて、所長の人柄や職場の雰囲気をリアルに伝える「採用広報」も重要です。「どんな人が働いているか」「どんな雰囲気で意思決定が行われているか」を可視化することで、入社後のミスマッチを防ぎつつ、自所の価値観に共感する「質の高い母集団」を形成することが可能になります。
船井総研の提言
採用難を「組織変革」のチャンスに変える 事務所の成長は「採用」に直結します。記帳代行などの定型業務を極限まで効率化・外出しし、職員が経営支援やコンサルティングという「高付加価値業務」に挑戦できるステージを用意することこそが、向上心の高い優秀な職員を惹きつける最大の差別化要因であり、持続可能な事務所経営への第一歩となります。



