お世話になっております。
船井総研の亀村でございます。
前回のコラムでは、2026年の相続業界における「二極化」の実態と、申告単体の収益モデルから脱却するための3つの取り組みをお伝えしました。
今回は、6月6日に開催した相続合同例会で多くの先生方から反響をいただいた2つのテーマ、「新規事業(士業外事業)によるLTVの拡大」と「非資格者を活かした人材育成・営業体制の構築」について、当日の事例を交えながら解説します。
今回の例会で冒頭に強調されたのは、「相続ビジネスで伸びている事務所は、必ず事業付加を行っている」という事実です。
申告件数が増えているにもかかわらず利益が残らない事務所と、同じ市場環境で着実に収益を伸ばしている事務所。
この差は、「申告後の顧客ニーズを取り込めているか否か」と「その業務を担える人材が育っているかどうか」に集約されます。
「申告後」にこそ売上がある
――税理士が今すぐ取り組むべき士業外事業の3ステップ
税理士事務所が相続分野で事業付加に取り組む際、例会では明確なステップが示されました。
これは難易度や投資コストだけでなく、既存業務との「シナジーの大きさ」によってお伝えしております。
【STEP①:行政書士機能の付加】
行政書士業務の相続手続き付加で得られるのは、「税務以外の非資格者対応領域の拡大」です。
相続税申告の前後に発生する遺言・財産管理・手続きサポートといった業務は、税務資格がなくても対応可能な領域が広く、補助者スタッフを即戦力として活かしやすい点が最大のメリットです。既存業務の延長線上で自然に受任できるため、立ち上げの敷居も低く、「これまで対象外だった顧客層」へのアプローチが可能になります。
【STEP②:保険代理店の付加】
保険業務は、顧問先・相続税申告後の顧客への提案と相性が抜群です。
例会で紹介された東海エリアの税理士事務所(相続売上4,000万円・従業員70名)の事例では、相続対策部門に専任者を配置し、顧問先に保険提案を行うことで担当者1人の売上が3,500万円超に達したといいます。具体的なトリガーとしては「相続財産の大半が不動産」「法定相続人が4人以上」「役員報酬が高いが個人積立が少ない」などのチェックリストを初回面談に組み込み、保険ニーズを可視化することがポイントです。
【STEP③:不動産事業の付加】
相続財産の中で最も比重が大きい不動産の「出口支援」を担えるという意味で、不動産事業の付加はLTV拡大に直結します。
東海エリアの別事例(相続売上4,000万円・従業員35名)では、社内の宅建士を中心に立ち上げ、面談フローに不動産査定を組み込むことで平均単価が100万円から180万円へと向上しました。初回相談の段階で「保有・利用・売却意向」を確認し、不動産会社に流れる前に自社で出口提案を行う導線を整えることが受任率最大化の鍵です。
これらの事業付加に共通するのは、「他士業との連携(紹介)」ではなく「グループ化・内製化」を目指すという思想です。
紹介連携は初期投資が少なく始めやすい反面、提案タイミングや顧客情報のコントロールが難しく、収益も限定的です。
自社グループ内で入口から出口まで一気通貫で支援することで、顧客満足とLTVの双方を高めることができます。
「資格者に頼らない組織」が成長の前提
――非資格者活用と"製販分離"による次世代人材戦略
例会の人材戦略パートで繰り返し強調されたのが、「製販分離」という考え方です。
「製」=業務処理を効率化する体制と
「販」=数字を作れる面談員・営業担当者を育てる体制を分けて整備することで、
資格者不足・人件費高騰という構造的課題を突破するという発想です。
「販」の柱となる面談員育成では、未経験者でも半年以内にバックエンド商品を受任できる水準に育てることを目標にお伝えさせていただきました。
実際の成功事例として、未経験採用者が6か月で月8件の遺産整理を受任し、1年後には死後事務や信託まで対応できるようになったケースや、面談員を3名から7名に増やした結果、相続の平均受任単価が13万円から32万円へと向上した事務所が紹介しております。育成ツールとしては、「誰でも提案できるヒアリングシートや提案資料の整備」「面談ロープレの仕組み化(回数・録音・PDCAの循環)」「AI活用による即時フィードバック」の3点セットが有効です。
「販」のもう一つの柱が営業担当者の育成です。例会では「代表ではなく"営業担当者"でも開拓可能」というメッセージをお伝えさせていただきました。成果を出している営業担当者の前職として挙げられたのは、元ホテルマン・元看板屋・元携帯ショップ店員など、一見士業と無関係に見えるキャリアの方々です。重要なのは「お仕事ください営業」から「パワーパートナー営業」への転換、すなわち士業の知識を対価に、勉強会を通じて提携先に案件を紹介してもらう仕組みを作ること。実際に、この手法で取り組み開始2年で売上5,000万円増、5年で売上1億円突破を実現した事務所の事例も紹介させていただきました。
「製」の側では、分業体制の構築と補助者による追加提案の仕組み化が鍵となります。戸籍収集・土地評価・申告書作成などを専担チームに分けることで1件あたりの処理時間を圧縮し、補助者が顧問先への挨拶回りや申告完了後のフォロー時に二次相続や生前対策の追加提案を行う体制を整えることで、資格者の手を借りずに売上を積み上げることができます。
人材育成と事業付加は、表裏一体の戦略です。士業外事業(保険・不動産・行政書士業務)は、非資格者が主役になれる領域であり、「育てる場所」と「活躍する舞台」を同時に設計できます。まず何の事業を付加するかを決め、そこで活躍できる人材像を定義し、採用・育成・評価の仕組みをセットで整備する―この順番で設計した事務所が、今まさに競合との差をつけ始めています。
追伸:
今回ご紹介した「士業外事業の立ち上げ」「非資格者を活かした営業体制の構築」は、いずれも相続合同例会の参加事務所から実際に成果が出ている取り組みです。
「自分の事務所のステージではどのSTEPから始めるべきか」
「面談員・営業担当者の育成を具体的にどう設計すればよいか」
など、先生の状況に合わせた優先順位を個別にご提案します。
ぜひ、無料の経営相談をご活用ください。




