相続業務とAIの相性の良さは、多くの事務所が実感し始めています。しかし「一部の
スタッフが個人的に使うだけ」「試したが定着しない」という声も少なくありませ
ん。AIは導入することより、事務所に根づかせることの方がはるかに難しいのです。
本コラムでは、相続業務にAIを導入する際に踏むべき3つのステップを整理します。
前回のコラムでは、6月6日に開催した相続合同例会で多くの先生方から反響をいただ
いた2つのテーマ、「新規事業(士業外事業)によるLTVの拡大」と「非資格者を活か
した人材育成・営業体制の構築」について
お伝えをさせていただきました。
今回は、最近ご相談いただくケースが増えている、相続業務におけるAI導入につい
て、具体的な3ステップを交えてお伝えさせていただきます。
AIは「入れる」より「根づかせる」が難しい
相続業務とAIの相性の良さは、すでに多くの事務所が実感し始めています。
財産資料の要約、相続人向け説明文の作成、提案シミュレーションの下準備など…活
用場面は広がっています。
しかし、実際に事務所へ導入しようとすると、「一部のスタッフが個人的に使ってい
るだけ」「試したが定着しなかった」という声が少なくありません。
AIは導入すること自体より、事務所に根づかせることの方がはるかに難しいのです。
そこで、相続業務にAIを導入する際に踏むべき3つのステップを整理します。
相続業務にAIを導入する3ステップ
ステップ①:セキュリティの土台を固める
最初に着手すべきは、効率化でも活用アイデアでもなく、セキュリティです。
相続業務では、戸籍・財産情報・家族関係といった極めて機微な個人情報を扱いま
す。
これらをAIに入力してよいのか、入力した情報がどう扱われるのかここが曖昧なまま
では、現場は安心して使えません。
具体的には、入力してよい情報・してはいけない情報の線引き、法人向けでデータが
学習に使われないサービスの選定、利用ルールの明文化が出発点になります。
「まずルールを決める」ことが、結果的に活用のアクセルになります。
ステップ②:業務フローに組み込む
次に、AIを「思いついたときに使うツール」から「業務フローの一部」へと位置づけ
ます。ここが定着の分かれ道です。
たとえば、相続案件の受任時に資料要約の工程を標準化する、初回面談前の説明資料
作成に必ずAIを通す、といった形で、既存の業務手順の中にAIの出番を明確に埋め込
みます。
「使ってもいい」ではなく「この工程ではこう使う」まで落とし込むことで、はじめ
て属人的な利用から脱却できます。
この段階で、チェック体制・AIの出力を誰がどう確認するかもあわせて定義しておき
ます。
ステップ③:組織的に浸透させる
最後は、事務所全体への浸透です。一部のITに強いスタッフだけが使える状態では、
事務所としての力にはなりません。
成功事例の共有会、うまくいったプロンプトの蓄積・共有、所長自身が率先して使う
姿勢、こうした地道な取り組みが、組織文化としてのAI活用を育てます。
特に所長の関与は決定的です。トップが「効率化の道具」ではなく「提案力を高める
投資」として位置づけるかどうかで、浸透のスピードは大きく変わります。




