法律事務所コンサルティングチーム 阿部 悠紀(あべ ゆうき)
サービスや商品の種類に限らず、業績アップの肝は「仕組み化」にあります。
仕組み化を言い換えれば、「個人のスキル、属人性に依存せず、誰が担当をしても、
一定以上の成果をあげることのできるシステム」と言えます。
とりわけ、士業事務所のような労働集約型産業においては、
特定の人材でしか対応できない領域がどうしても多くなってしまいがちです。
「所長でなければ対応できない。」「新人には任せられない。」といった業務が、
日常的に発生していますが、これらを極力なくしていくことが重要です。
それでは、実際に業務を標準化していくためには何から始めれば良いでしょうか。
日々、コンサルティングをさせていただく中でお伝えをさせていただいているのが、
「客層を絞る」というアプローチです。
たとえば、弁護士の離婚サポートにおいて、見込み客全員を集客していると、
必要となる知識、対応しなくてはならない範囲、アドバイスの幅は必然的に広がります。
当然ですが、「親権を獲得したい40代の男性」
「所有不動産の財産分与で争っている60代の女性」
「不貞相手に対して慰謝料を請求したいと考えている20代の女性」など、
相談者の属性に応じてアドバイスの内容は異なります。
日々、多様なご相談に対応していく中で、確実にスキルアップは図れると思いますが、
特定領域を集中的にインプットするわけではないので、
どうしても吸収スピードが上がりません。
そうなると、いつまでも、所長や中堅所員と新人との差は埋まらず、
属人性の高い業務が残ってしまうのです。
これらの問題を解消するためにも、あえて「客層を絞る」のです。
たとえば、「女性のための離婚相談」や「協議離婚に特化をした弁護士」などと
ホームページ上で訴求をすることにより、相談者に偏りが生まれていきます。
客層を絞るということは、顧客のニーズそのものが限定されることになるので、
売るべき商品・サービスが絞られるだけでなく、
その売り方(営業手法、クロージングトークなど)も絞られます。
そうすることで、個人のスキル、経験に依存することなく、
それぞれの所員が力を発揮できるようになり、生産性が向上していくのです。
マーケティングにおいては、客層(ターゲット)を絞ってしまうことで、
顧客数が少なくなってしまうのではないか、できるだけ広く網を張っておいた方が
良いのではないか、とお考えになられる方も多いようですが、
むしろ客層を絞ることで、ニーズが正確に捉えられるようになり、
顧客は増やせます。さらに、皆さんもご経験がお有りだと思いますが、
特定領域の専門性を身に付け、顧客から喜ばれる経験をすることで、
自信ややりがいが生まれ、それ以外の仕事もどんどんできるようになっていくということは、
珍しいことではないと思います。これは資格者業務であるかどうかには関係ありません。
仕組み化という観点では、所内研修や業務のマニュアル化、
情報共有システムの導入など、手法は様々考えられますが、
すぐに始められることとして、「客層を絞る」ことによる、
「業務の仕組み化」に取り組んでいただきたいと思います。
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阿部 悠紀(あべ ゆうき)