法律事務所コンサルティングチーム 吉冨 国彦(よしとみ くにひこ)
皆さん、こんにちは。士業支援部法律グループの吉冨国彦です。
今回は「社労士事務所チャネル開拓から顧問契約を生み出す方法」をお伝えします。
■顧問契約を加速させる3つのマーケティング手法
顧問契約を獲得するうえで、有効なマーケティング手法としては主に、「企業法務特化サイトの構築」、「業種×分野に絞ったセミナーの開催」そして「士業事務所チャネル開拓」の3つがあります。
私は普段、東京や大阪をはじめとした都心部以外に、人口10万人以下の地方都市において法律事務所の企業法務分野および顧問契約の獲得に関するコンサルティングを行っていますが、商圏人口や事業所数に関係なく成果が出ているのが「士業事務所チャネル開拓」となります。
「士業事務所チャネル」として、弁護士と相性が良く、顧問契約に繋がり易い士業は「社労士」です。
いま、“働き方改革”や“長時間労働”、“残業代”といった「労働」にまつわるキーワードを目にしない日はありません。それだけ、少子高齢化、労働の売り手市場という背景の中で、「労務」に関する法務ニーズも高まっています。
社労士の先生方は、労働法の改正も多く、就業規則の見直しを提案する機会も増え、労務顧問として寄り添っている企業の経営者から労務問題に関する相談を受ける機会も増えています。
そのような背景をもとに、企業の労務問題を扱う中では、残業代請求訴訟や不当解雇を巡る労働審判など、労務トラブルが顕在化、紛争化してしまい、社労士の先生方では対応ができない交渉の代理をする案件も増えてきています。
言い換えれば、労務問題に関するニーズが増える中で、社労士の先生方が手に負えない事案も増えており、唯一代理行為ができる弁護士に案件を紹介してもらうケースも増えており、それは都心部に留まらず、地方都市でも同じ現象が起こっています。
■社労士事務所チャネルを開拓する2つの方法
いま、私が担当させていただいている事務所でも、社労士事務所のチャネル開拓を実施しています。開拓の方法としては主に2パターンあり、ひとつは「アンケートDMの配布」もうひとつは「社労士向け勉強会の開催」です。
特に成果が顕著なのが「社労士向け勉強会の開催」で、DMを作成し、地場の社労士の先生方に送付し、自社主催で勉強会を開催しお越しいただきます。
実施テーマとしては、「有期雇用契約の無期転換」、「残業代請求初期対応」、「メンタルヘルス対応」、「労働審判対応」などです。
都内の事務所では、主要3区の社労士の先生方にご案内をお送りしたところ、計3回のセミナーで延べ100名弱の集客をすることができました。
地方都市においても、10名以下の相談部屋であれば満員になることがほとんどで、集客ができない、ということはほとんどなく、それは、勉強熱心な社労士の先生方にお送りしているということが影響しているのかもしれません。
■紹介案件を発生させる「士業向け顧問契約プラン」とは?
そして、勉強会に来ていただいた社労士の先生方には、法律事務所が作成した「士業向け顧問契約プラン」をご案内します。事務所により料金体系は異なりますが、月額1万円もしくは2万円のケースが多く、内容としては
①社労士事務所自体からの法律相談
②社労士のクライアントからの法律相談
③セミナーおよび勉強会の参加割引
④講師費用割引による研修の実施
⑤顧問弁護士の外部表示
などです。
そして「士業向け顧問契約プラン」を結んでいただいた社労士事務所からは、自所の相談やクライアントの相談をされます。自所の相談としては、
「作成した就業規則に法的な抜け漏れがないか見て欲しい」
「訴訟になった際に企業側のリスクを最小限に留められる内容になっているか確認して欲しい」
「契約書の相談を受けたが、法的に根拠のあるアドバイスができないので、助言が欲しい」
といった内容が多くあります。
また、クライアントが紛争案件に巻き込まれてしまった場合は、「士業向け顧問契約」を結んだ弁護士に相談する場合が多く、弁護士としてはスポットで受任する場合や、初回相談時から顧問契約を締結のうえ、対応に当たることがほとんどとなります。
■弁護士と社労士それぞれが求めること、誤解されがちなこと
社労士の先生方は、既にお知り合いの弁護士や親しくされている弁護士もいる中で、
「特定の分野および業種に強い弁護士」
「使用者側に特化している弁護士」
「クライアントの気質に合いそうな弁護士」
を探しており、複数の弁護士チャネルを保有、クライアントに付加価値として提供したいというお考えをお持ちのケースがあります。
「労務分野では社労士と競業するので、協業はできない」
「既に知り合いの弁護士がいるようだから、協業するのは難しい」
「そもそも社労士から案件を紹介してもらったことがない」
とお考えの弁護士の先生がいらっしゃることもよくありますが、それは全くの誤解です。
事実として、社労士事務所の開拓を行い、そこを契機に一気に顧問先を増やされている事務所があります。
■チャネル開拓後、案件を発生させるために重要な取り組みとは?
ただ、社労士事務所のチャネル開拓をしても、「案件を紹介してもらえない」ということは往々にしてあります。それは、「社労士へのフォロー」ができていないからです。
社労士の先生方から案件を紹介してもらったり、相談を発生することができている法律事務所および先生は、しっかり社労士の先生方をフォローされています。
具体的には、
①社労士向け勉強会の定期開催
②ニュースレターの発送
の2つです。
いわば、関係を構築したあと、全く接点がない場合は、「紹介があれば欲しい」といった一方通行で営業的な側面が強いイメージを持たれてしまう可能性があります。逆に相談案件が発生するまで、発生して以降も定期的に勉強会に招待したり、ニュースレターを通じて最新の法務情報を届けたりすることで、信頼感や親近感を構築することができます。
それが結果的に、案件があった時に思い出してもらったり、「いつも世話になっているから〇〇先生に今回は紹介しよう」という義理にも訴えかけることができたりします。
■社労士事務所チャネル開拓による成功事例
このような取り組みを忠実に行い、
・有料士業顧問契約10事務所 うち1事務所とは月額5万円で契約
・1事務所から2社クライアントを紹介いただき、2社とも顧問契約
・社労士会での講演依頼を獲得し、県内での認知拡大に繋がり、案件紹介が増加
・クライアントの労務問題、債権回収案件等を紹介いただき、4社顧問契約
など着実な成果を出している事務所が出てきました。
適切な方法でチャネルを構築し、適切なフォローをすれば案件を発生させることはできます。逆に間違ったやり方をすると、案件を紹介してもらえる関係を構築することはできません。
今後、企業法務分野を強化し、特に他士業事務所のチャネル開拓や関係の構築を加速させたいという先生方は是非、ご参考にしていただければと思います。
■企業法務分野の最新マーケティング事例が学べる「企業法務研究会」
また、9月27日(水)には船井総研が主催している「企業法務研究会」も開催されます。講座の中では、会員事務所様のチャネル開拓事例や、船井総研コンサルタントによる最新マーケティング事例を知っていただくことができます。
第一講座は、法律グループのコンサルタントから 「顧問開拓に関する最新事例」をお話しさせていただきます。
第二講座は、株式会社船井総合研究所にて、フードビジネス支援部の部長を務め、飲食業界(主に外食産業)のコンサルティングで数多くの実績を持つ、二杉 明宏にご講演いただきます。大小様々な飲食店の実態を見てきた経験から、飲食業界に潜む法的リスクやニーズ、業界を攻略するポイントについて解説していただきます。
第三講座は、参加された事務所様同士による「顧問獲得実践事例情報交換会」を開催いたします。
第四講座は、「飲食業界における法的ニーズ及び顧問獲得手法」と題しまして、弁護士法人心斎橋パートナーズの神田孝先生にご講演いただきます。神田先生は、チェーン・ビジネスを専門とする日本で数少ない弁護士であり、主に飲食店のフランチャイズチェーン、レギュラーチェーンの顧問を多数務めております。その経験を基に、飲食店に対する顧問の提案方法や、具体的な提案内容についてお伝えいただきます。
最終講座には「顧問開拓ベスト事例及び本日のまとめ」について、法律グループのグループマネージャー鈴木よりお話をさせて頂きます。奮ってご参加をして頂けましたら幸いでございます。
【9月度企業法務研究会スケジュール】
・第一講座 「顧問開拓に関する最新事例」
講師名:㈱船井総合研究所
・第二講座 「飲食業界の現状と業界攻略のポイント」
講師名:㈱船井総合研究所 上席コンサルタント 二杉明宏
・昼食 ※昼食は弊社にてご用意しております。
・第三講座 「顧問獲得実践事例情報交換会」
講師名:㈱船井総合研究所
・第四講座 「飲食業界における法的ニーズ及び顧問獲得手法」
講師名:弁護士法人 心斎橋パートナーズ 代表社員 神田 孝氏
・第五講座 「顧問開拓ベスト事例及び本日のまとめ 」
講師名:㈱船井総合研究所
企業法務研究会のご案内はコチラ
https://bengoshi-samurai271.funaisoken.co.jp/page-1937
吉冨 国彦(よしとみ くにひこ)