法律事務所コンサルティングチーム 鈴木 圭介(すずき けいすけ)
業際という考え方が、年々、市場のニーズと合致しないというケースが増えていると思います。法律事務所は訴訟業務を中心に対応する、会計事務所は税務処理業務を中心に対応する、社会保険労務士事務所は労務関係書類の作成業務を中心に対応するといったように基本となる、中核となる業務をやりつつも、会計事務所に社労士業務を付加するケースや、法律事務所に税務処理業務を付加するケースが最近増えつつあります。
また、もう少し広い視点で見ると、海外進出に関するサポート業務を、コンサルタント会社・会計事務所・法律事務所が一つの事業体となってサービスを提供するケースも増えておりますし、会社設立においても、上記のような複数の士業や関連業が一つの事業体となってサービスを提供しているケースは増えています。
今注目をされている一つの分野として「情報セキュリティ分野」がありますが、こちらの分野が既存業種の中でどの業種が一番メインとするべきか?と問われると、回答は人とによって異なると思いますし、既存業種の区分では、区分しきれない領域だといえます。
実際に私が取り扱ったある事例では、IT企業で不正アクセスを防止するシステムを作る会社と社内における情報管理体制を見直すことが得意な法律事務所とか連携し、セミナーを開催し、情報セキュリティの強化に関する案件を獲られておりました。
既存の業際に目を向け過ぎてしまい、新しい市場を逃してしまったというケースは少なくありません。また、相続市場のように士業が今までメインでやっていたという領域に、士業以外の業種が驚異的なペースで入ってくるということも事務所経営をする上では想定をしておかないといけません。
業際という概念を大事にしつつも縛られず、市場のニーズに合わせて、事務所形態や事業範囲を柔軟に変化させ、外部との連携や、今までに無い人財の採用、既存の所員の方に新しい資格を取得してもらう等、市場が大きく変化している状態ですので、危機と考えずに機会と捉えて、果敢に様々なことに挑戦をしてもらいたいと思います。
鈴木 圭介(すずき けいすけ)