法律事務所コンサルティングチーム 川上 英秀朗（かわかみ えいしゅうろう）
法務省が発表した2017年司法試験受験者数は5,967人と初めて6,000人を下回りました。昨年と比較すると932人減少しています。そのため今年の合格者は1400名を下回る可能性があります。また、その後、司法修習を経て弁護士として登録する先は大都市に集中する傾向が強まっています。その結果、地方の法律事務所ではひまわり求職求人ナビへ求人を掲載しても応募がない、弁護士会の合同説明会に参加しても修習生が来ないというという声を多く耳にします。
実際に、弊社がお付き合いしている法律事務所は地方にも多くございますが、弁護士を採用したいが応募が少ない、または応募があっても採用にいたらないという声を聞きます。そのような状況を打開する方法が法科大学院生向けのサマークラークです。
サマークラークは、法科大学院生が夏期休業に合わせて、法律事務所でインターンをすることで、大手渉外事務所が実施している応募者獲得方法です。そして、このサマークラークを開催するメリットは、以下の３点です。
①採用候補者への早期接触と動機付け
②事務所の認知度の向上
③リストの確保
①は企業でのインターン採用へシフトしているように、これまでは司法試験受験後または合格発表後からのアプローチを法科大学院在学中から接点を持つことです。②は実際に事務所へ訪問してもらうことで事務所理解が深まります。また、仮に応募に応募場に至らなくても、サマークラークを実施する法律事務所はまだまだ少ないため、事務所の存在を知っていただく機会にもなります。
③は受け入れできる人数の都合で参加できなかった方へも、その後の事務所説明会を開催する際に案内を送付し誘導することが可能となりますので、今後の見込み客作り（採用候補者）にもなります。
今年は、北海道、四国、九州の法律事務所にて7月から応募を開始したところ、1週間で各事務所とも20名前後の応募が集まっています。昨年は、今回と同じ北海道と九州の事務所ではサマークラークを実施しましたが、応募者が1~2名でした。なぜ今年はこのような違いが生じたのでしょうか。
今回、応募を獲得できたサマークラークのポイントは、以下の５つです。
①地縁関係なく全国の法科大学院生が対象
②事務所にて交通費・宿泊費負担
③短期間開催
④内容は業界解説＋地方での弁護士キャリア解説重視
⑤有料求人広告を活用した集客
始めに、①のターゲットですが、これまでは地縁のある方で遠方の法科大学院通われている方が帰省時に、またはその地域の法科大学院生が夏期休業中にサマークラークへ参加するターゲットとしていました。しかし、今回は対象を全国の法科大学院生へ広げ、その分②の交通費・宿泊費は事務所にて負担します。その背景に、冒頭で説明させていただいた合格者の減少と弁護士の大都市部への集中による地方での採用難があります。少しでも母数を広げ、魅力を知ってもらい、採用に繋げることが目的です。
③短期間開催は、通常大手渉外事務所などのサマークラークでは平日５日間の開催ですが、今回は２日間で実施しています。これは、開催する事務所の負担を減らす、また参加者の参加の敷居を下げるためです。１つの事務所を深く知るより、少しずついろいろな事務所を見てみたいという声を多く聞きます。④の内容は、業務経験も重要ですが、そもそも業界のことが知りたい、またその地域での弁護士としてのキャリアがどのようなものか知りたいというニーズからこのような座学も取り入れることを告知しています。
最後に集客ですが、これまでは法科大学院へ案内を送付していましたが、今回は有料求人広告も活用したことでそこからの応募も多くありました。サマークラークは、どちらかというと東京・大阪の大手の企業法務系の事務所が開催し、一般民事系の事務所で更に地方の事務所での開催はほとんどありませんでした。しかし、実際にはそのような機会を探していた学生が多いということは、今回の結果からも分かりました。
首都圏の法律事務所では、一足先に昨年こちらのポイントを押さえたサマークラークを実施したところ、応募が殺到し途中で応募を締め切りました。そして今年、その参加者が司法試験を受験しこのまま順調に選考を通過すれば採用される予定です。その手法を今年は地方の法律事務所にて実施し、これまでと比較して非常に多くの応募を獲得しています。企業でインターン採用が非常に増えていることから、法律事務所でもこの手法は広がっていくことが考えられます。
法科大学院の夏期休業は８月上旬から９月中旬です。もし、弁護士を採用したいが応募が少ないという事務所は、都市部・地方の事務所に限らず実施されることをお勧めします。今年の夏開催も、８月上旬に案内ができればまだまだ実施可能です。
詳細に関しては、こちらからお問い合わせください。
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川上 英秀朗（かわかみ えいしゅうろう）
