2020年08月05日

<人材育成>新入社員の戦力化を早めるためにやるべき5つのコト

こんにちは!船井総合研究所の稲冨です。
はじめに ご質問です。 皆さまの事務所では、

Q:業界未経験者の新入社員を“戦力化”するためにどのくらいの“期間”を要していますか?

昨今、多くの士業事務所様から<新入社員の早期戦力化のための人材育成>についてご相談をいただきます。人材育成は単純に人材育成プログラムや研修プログラムがあるだけでは戦力化を早めることはできません。下記の4つの要素の精度で新入社員の戦力化の期間は短縮できます。

今回のコラムでは、 「➂人材育成の風土」「➃育成の仕組み」の2つをピックアップし、人材育成の風土作りを含めて「新入社員の戦力化を早めるためにやるべき5つのコト」をお伝えします。

1.人材育成の風土を作るために人材育成の指針を示す

事務所としてどのような人材育成の風土を作っていきたいですか?
人材育成の風土を作るためには、経営者が想うことを文章化した人材育成の指針が必要です。それは口頭だけでは伝わりづらいからです。例えば、経営者は、新入社員を全社員で育成していくことが当たり前という想いがあった場合、社員にはそれが伝わっておらず、教育担当者が一人で1から10まで教えているようなことが発生します。口頭だけでは思っている以上に社員には伝わっていません。そのためにも、人材育成の指針を明文化し、既存社員に対して人材育成の説明会を実施しています。

・人材育成の基本的な考え方
・育成の思想
・新入社員の育成の考え方

など、経営者が想う人材育成の考え方を人材育成の指針として作成し、社員に伝え続けることをオススメします。

2.“戦力化”と“一人前”の人物像基準を示す

3年後にどのような人物になってほしいですか?
戦力化に1年、一人前に3年の期間が必要です。そのためにもまずは3ヶ年成長イメージとして定量面・定性面で人物像基準を設定します。新入社員に3年後にどのような人物に成長してほしいのかを示すことで目標設定し、成長することができます。

そして、戦力化の基準も忘れないように設定することが必要です。戦力化の基準は新入社員が第一に到達してほしい基準です。下記のように人事評価制度で構築する等級要件書の1等級を戦力化の定義にしています。

事務所として、3ヶ年成長イメージ・戦力化の基準を明文化してみてはいかがでしょうか?

3.人材育成プログラム<1年目・2年目>を明確にする

人材育成プログラムとは、1年後・2年後の到達目標を設定した上で、業務・研修を行っていくというものです。1年目は、到達目標として<1週間以内・1ヶ月以内・3ヶ月以内・6ヶ月以内・9ヶ月以内・12ヶ月以内>を設定し、何ができるようになる必要があるのか?を設定します。

2年目は、納品売上などの担当者として「成果」を意識できるように人材育成プログラムを構築します。また、2年目からは各人の成長度合いに合わせることも必要です。

4.育成責任者と育成担当者を設定する

人材育成は「育成の連鎖」を作ることが重要です。育成の連鎖とは、上記のように新入社員が3~5年後に、育成担当者として活躍してもらうように仕組み作りと動機付けを行うことで、人材育成をすることが当たり前の風土を作っていくことです。“今”新入社員に対して行っている“育成”が3年後の人材育成の風土を作っていきます。具体的には、下記のように育成責任者と育成担当者を設定します。

 □ 育成責任者:管理職以上
・・・育成担当者が人材育成プログラムを通じて新入社員に対するフォローができているかを確認する
※育成担当者をマネジメントしていくこと

□ 育成担当者:管理職候補者、S-2等級以上(3年目~5年目社員)
・・・人材育成プログラムを通じて新入社員の育成を担当する
    ※プライベート含めてどのようなことでも相談ができることが理想

育成担当者を選定する際には1点だけ注意が必要です。それは育成の風土があるのか?ないのか?です。
育成の風土がある事務所の場合は、ベテラン社員がOJTなどを通じてフォローができるため、育成担当者に若手社員を任命することで、新入社員だけではなく、育成担当者自身の成長にも繋がり、相乗効果を期待できます。そのため、若手有望株にはぜひ育成担当者を任せてみることをオススメします。
反対に、育成の風土がない事務所の場合は、注意が必要です。育成の風土がない場合には、ベテラン社員が新入社員をフォローしない/できないケースが多いです。その場合、3年目の若手を教育担当者に設定してしまうと、“分からない人が” “分からない人に” “分かっていないこと”を教えるだけになってしまい、育成が中途半端になります。組織内不和をもたらす可能性もあるため、まだ育成の風土がない場合には、管理職や管理職候補が率先して育成担当者をすることをオススメします。

5.新入社員とコミュニケーションが活性化する仕組み作りを行う

新入社員とのコミュニケーションが活性化する仕組み作りが重要です。
入社後1ヶ月~3ヶ月程度は、誰しも「この事務所でこれから働いていけるのか?」という不安を抱いています。その不安を払拭するためにもコミュニケーション頻度を最大化することが必要です。
 
 日【10分】:一日で何か困ったことはなかったか?
 週【20分】:1週間で実施したことを確認(人材育成プログラム参照)
 月【30分~60分】:1ヶ月で学んだことの振り返り・次月に実施することの確認

は最低限実施したいことです。そのほか新入社員側から大変好評な取り組みとしては、日報を通じた交換日記です。
 
  ➀本日の実施事項の詳細
  ➁現状の課題
  ➂研修の受講結果/活かしたいこと
  ➃試験勉強などの進捗状況
  ➄その他育成担当者に質問・相談したいこと

上記の5つの項目を入社から3ヶ月間、新入社員が日報に記載し、育成担当者が1両日中には返信するという仕組みです。新入社員からすると1日の振り返りができ、また育成担当者が事務所に不在でも新入社員と育成担当者にコミュニケーションが発生し、徐々に信用・信頼の関係が生まれます。地味な取り組みですが、まだ事務所に慣れていない新入社員からすると、いつでも相談できる相談相手がいるというのは安心することができます。新入社員とのコミュニケーション頻度は重要なため、即時取り組むことをオススメします。

いかがでしたでしょうか。
今後どのような業界・業種でも新入社員の早期戦力化はより重要になってきます。そして「人」が商品である士業事務所は、なおさら新入社員の早期戦力化は重要です。3年で一人前と5年で一人前では、今後の経営に与える影響は非常に大きなものになります。新入社員の早期戦力化にお悩みの経営者は、ぜひ今回ご紹介した新入社員の戦力化を早めるための5つのコトは「最低限」実施していただければ幸いです。

【この記事を書いたコンサルタント】

シニア経営コンサルタント 稲冨 彰宏(いなとみ あきひろ)

役職:チームリーダー 幼い頃から土木卸業を経営する祖父の姿を見て育つ。 大学卒業後、大手システムコンサルティング会社に入社し、会計事務所向けシステムコンサルティングを経験。 在職中の業績達成率は100%を記録、優秀実績賞を3度受賞とトップクラスの成績を残す。 その後、会計事務所における採用・定着といったマネジメントの課題を解決する力を付けるため、船井総合研究所に入社。 船井総研入社後は、TKC時代より一貫して従事してきた税理士業界の経験を活かし、 従業員数5名規模の事務所から100名を超える事務所における評価制度構築・運用・定着を支援した実績を持つ。

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