2017年10月03日

“鉛筆なめなめ”ではもう古い?~会計事務所職員のお給料の決め方~

皆さま、こんにちは!会計グループの篠原黎と申します。



突然ですが、皆さまはどのように職員のお給料を決めていらっしゃいますか?

お給料は職員満足度やモチベーションに直結します。

弊社で実施している職員ヒアリング調査で、これまでにお聞きした内容の一部をご紹介しますと・・・



「給料の決め方が不明確なため、何をどう頑張ればよいかが分からない」

「将来的にどこまでお給料を貰えるのか分からないため、ずっと働き続けてよいか不安だ」

「自分がどういう評価か分からない、結局気に入られているかどうかなのではないか」



こういった不透明性や将来性への不安・懸念を訴えるマイナスの印象は、職員満足度の低下・退職へ繋がる場合も大いに有り得ます。しかし逆に考えると、お給料の決め方を明確にすることで、職員満足度の向上・退職の防止に繋がるとも考えられます。



そこで今回は、お給料を決めるために検討すべき3つのポイントについて、弊社研究会員様の事例をもとにお伝えいたします。



ポイント① 職員のレベルに応じ、事務所が求める要件を見える化できているか



ヒアリングを行うと、「何を頑張ればよいかが分からない」といった声を良くお聞きします。代表としては伝えたつもりでも、伝わっていないことの方が多いようです。
一般的に、新入社員や中堅・ベテランなど、職員のレベルに応じて求める行動・成果は異なります。

したがって、職員のレベル別に職務要件を明文化することで、「頑張ってほしい内容・レベル」を伝えることが必要です。



弊社のある研究会員様は、実務を担う職員のレベルを1~3等級の3区分に分け、それぞれに求める職務要件を「等級要件書」として明文化しています。実際に作成している「監査スタッフ」の要件の一部が以下になります。


等級要件書(イメージ) ※実務スタッフのみ

等級 1等級(0.5人前) 2等級(0.8人前) 3等級(1人前)
滞留年数イメージ 1~4年 2~6年 3~6年
等級の包括的定義 メンバーと協力しながら定常的または補助的な業務を正確に遂行する役割。 変化に対応しながら独力で遂行し、成果を創出していく役割。 担当分野のリーダー的存在であり、全体最適の視点を持ち解決策を提案し実行する役割
売上実績 0~400万円 400~1000万円/td>

1000万円以上
担当件数 0~10件 10件~20件 20件~
会計(月次チェック) 上司の指示のもと、月次試算表のチェックができる 小規模企業の月次試算表のチェック及び報告ができる 中規模企業の月次試算表のチェック及び報告ができる
法人(決算・消費税) 小規模企業の申告書が作成できる 中規模企業の申告書が作成できる 大規模企業の申告書が作成できる

※滞留年数とは、その等級に留まる年数を表す



「担当件数」などの各項目や要件の内容は、事務所として何を目指すのかによって異なります。

これらを職員がいつでも確認・閲覧できる状態にしておき、適宜周知することで職員に求めている行動・成果を明確にしましょう。

また、上記は実務を担う職員の要件ですが、管理職に該当する方がいる場合は、管理職用の要件書も作成した方が良いでしょう。



ポイント② 職員のレベルに基づいた基本給を設計できているか



「将来的にお給料をいくらもらえるのかが分からない」といった不満も良くお聞きします。

①によって自分自身に求められている行動・成果が明確になったとしても、頑張った分がどのようにお給料に反映されるのかが分からなければ不安に思うのも当然です。



①にてご紹介した事務所では、職員のレベルに応じた基本給テーブルを設計することで、将来的な給料予測をある程度可能にしています。



基本給テーブル(イメージ) ※実務スタッフのみ

  1等級 2等級 3等級
1号俸 190,000 220,000 250,000
2号俸 191,000 221,000 251,000
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
30号俸 219,000 249,000 269,000

※号俸とは、等級の中でのレベル感を表す



ここでのポイントは、各レベルに応じたテーブルを作成すること。また、管理職用のテーブルも別途作成することで、より将来的な視点を見せることも良いでしょう。

明確な給与体系を設計するには人事評価制度の構築が必要ですが、基本給は給与項目の中でも非常に重要な項目。まずは上記のテーブルを作成し、より明確な給与体系を作成しましょう。



ポイント③ 各個人別の評価を“見える化”しているか



最後に「自分がどのように評価されているのか分からない」といったお声も非常によくお聞きします。

お給料がどういった評価のもと決まったかどうかを見える化することは、職員に納得感を持たせるだけでなく、職員の成長のためにも重要です。



実際に事例としてご紹介している事務所では、各職員の評価を点数で表し、最終的に7段階の評価によってお給料を決定しています。また、評価の結果だけでなく、良かった点・改善すべき点を紙面に記載し職員にフィードバックすることで、職員育成の一環としています。



上記の事務所のように、評価を細分化した上で点数化できることが理想的ではありますが、「求めていた行動・成果」に対して実際はどうだったか、良い点・改善点は何かといった点について、明確にすることは非常に重要です。最低限評価結果と理由を説明できるように準備をすることが大切です。



終わりに



以上がお給料を決めるために検討すべき3つのポイントとなります。それぞれ一見当たり前なことかもしれませんが、全てできている事務所は多くありません。しかし、これらのポイントを抑えることは他の事務所との差別化に繋がり、人材戦略上非常に重要だと考えております。



弊社では、

「人事制度を作りたいけど時間が無い」

「職員から選ばれる事務所を作りたい」

「制度設計から将来的な人材戦略を検討したい」

といった皆様のために、上記のポイントを抑えた人事評価制度の構築・運用のお手伝いをしております。上記以外にもお伝えできることもあるかと思いますので、お気軽に弊社までご連絡ください。

https://www.funaisoken.ne.jp/mt/samurai271_zeirishi/inquiry.html

【この記事を書いたコンサルタント】

篠原 黎(しのはら れい)

東京都出身。 立教大学経済学部を卒業後、新卒で船井総合研究所に入社。 入社後は会計事務所、保育事業者に対するマーケティング支援や事業参入・新規設立に伴う採用支援に従事。 某省庁委託事業の設計・調査業務の経験も持つ。 現在は「個と組織の共栄」の実現に向け、会計事務所を中心とした採用支援や人事評価制度の構築・運用支援に従事している。

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