法律事務所コンサルティングチーム 鈴木 圭介(すずき けいすけ)
今回は2015年10月18日~24日に実施しました世界的なモデル企業を視察する「グレートカンパニーツアー」レポートの一部を紹介致します。
シカゴのあるイリノイ州は、州全土で人口1300万人と米国でも5番目に位置する大都市の一つです。その中に弁護士は約6.3万人おり、他の都市同様、日本との弁護士一人あたりの人口比で考えればとても多いことがわかります。街を歩いていると「人身傷害分野(injured=負傷した)」に関する広告を掲載しているバスが走っていました。その他にも離婚に関する看板もあり街中を歩いているだけでも士業の存在感は日本と比べるととてもあるように感じました。
今回の士業特化コースでは、会計事務所「Corbett Duncan & Hubly PC」(以後CDH)と法律事務所「増田・舟井・アイファート&ミッチェル法律事務所」の二つに訪問をして参りました。
まずは、CDHに関するレポートです。CDHは、60名前後の中小規模事務所であり、日本企業を中心に業務を行っている事務所でした。米国においては、会計事務所の市場も競争過多になっており、監査業務、税務業務はコモディディ化しており、何か特徴を持たなければ過当な価格競争に巻き込まれるという状況でした。
そこでCDHでは、監査業務や税務業務時にクライアントから相談の多い経営の合理化やよりクライアントに利益が残るようにアドバイスをするコンサルティング業務、IT化業務、HR(人財採用・就業規則作成・セクハラ対応等)業務を付加させ、コモディディ化することを防ぐ戦略を取られています。
「増田・舟井・アイファート&ミッチェル法律事務所」はシカゴ中心部に事務所を構え、創業1929年、弁護士数39名、中小企業~中堅企業を中心に扱われている事務所様です。創業はアメリカ人のトーマス様で、日本名は入っていますが、純粋な米国事務所です。主な業務内容は、企業法務、ヨーロピアン・サービス、不動産、流通販売、環境・衛生・安全法務、知的財産テクノロジー、移民法、訴訟、雇用労働法と多岐に渡りますが、クライアントの多くは日本企業という特徴があります。
今回の視察で一番の学んだ点は、時流に適応するために組織体制においても専門化を進め、事務所を成長できたという点です。1982年の段階では、弁護士が全ての案件に対応し、経営においても弁護士が行い、経営判断は事務所全体での協議で決定するというスタイルでしたが、競争が激しくなるにつれてその体制では競争力が無くなったため、徐々に組織体制を変化させていったそうです。各弁護士には、弁護士としてのスペシャリティを徹底に的に高めるために、注力分野を絞り、かつ経営する上で必要な様々な事柄に関しては別の専門家を立て対応するという方式に徐々に変化させたそうです。また、経営判断を早くするために各PTを組成し、権限を委譲させたそうです。
日本においても、弁護士の方以外の方を顧問先の窓口担当(コンシェルジュ機能)を設置し、案件の発掘やフィルタリングを行う事務所は増えつつあります。今後より、専門性が必要となり、組織の中で、機能分化と専門化が進む上ではとても参考になる事例でした。
自分達がどのような事務所を目指し、どの顧客に貢献するべきか、そのために必要なこと、不必要なことを明確にし、削ぎ落とし、伸ばすべき所に徹底的に投資する戦略は大変勉強になりました。日本においても同じような現象は既に発生しているため、過去や周囲の状況に引っ張られることなく、自分達がどのような事務所を目指すのかが改めて重要だということも再認識させられた視察でした。
鈴木 圭介(すずき けいすけ)