こんにちは。法律事務所の企業法務コンサルティング部門の責任者をしています吉冨国彦です。
法律事務所が今後、注力したい分野に「企業法務」が2年連続1位に
弁護士業務におけるライフサイクルも変わり、ここ数年、法律事務所のコンサルティングを行っている船井総合研究所にも、企業法務分野でのコンサルティングをご依頼される法律事務所が増加しています。船井総合研究所では、全国約250の法律事務所さまが参加されている経営研究会の会員様を対象に、今後、注力されたい分野・領域に関するアンケート調査を実施したところ、2019年と2020年の調査において「企業法務」が2年連続1位となり、企業法務分野に注力をされたい法律事務所が全国的に非常に多くいらっしゃることを再認識することができました。
プロモーションの差別化では顧問契約数は伸ばせない
このように、ここ数年でも企業法務分野のマーケティングに取り組む法律事務所が増加したこともあり、
①「企業法務に特化したホームページを立ち上げる」
②「企業向けにセミナーを定期開催する」
③「社労士や税理士とのコネクションを作る」
といったプロモーションを行うだけでは、経営者との接点を創出することは困難になっており、接点が創出できたとしても、顧問契約やスポットでの契約に至らないというケースも増加しています。
このような背景において、顧問契約の成否を分けるのは「対象とする企業の選定」、「プロモーション戦略」、「営業」、「顧問サービス」という観点になります。今回は「対象とする企業の選定」について説明し、次回以降、「プロモーション戦略」、「営業」、「顧問サービス」について説明させていただきます。
まずは、顧問獲得のゴール・目的と対象とする企業を明確に
顧問契約を獲得するうえでは、まず自所におけるゴール・目的と、対象とする企業を明確にする必要があります。
ここでいう、「自所におけるゴール・目的」とは・・・
①今後、1年~5年程度の期間で何社、顧問契約数を増やしたいのか
②今後、1年~5年程度の期間で、月額顧問料収入はいくらを目指すのか
③定量的な目標以外に、ブランディング的な側面を考慮に入れるのか
④代表弁護士以外でも顧問契約が取れる仕組みを構築するのか
などになります。
また、「対象とする企業」とは・・・
①業種の特定(情報通信業、運送業、建設業、医療機関、不動産業・・・)をするのか
②企業規模・ステージの特定(中小企業、中堅企業、大企業、スタートアップ、IPO予定企業・・・)をするのか
などになります。
・3万円の顧問契約を10社獲得する
・5万円の顧問契約を5社獲得する
・10万円の顧問契約を3社獲得する
いずれも月額顧問料収入は30万円ですが、3万円、5万円、10万円を毎月支払える企業規模や、コロナによって業績に影響を受けている業種は異なるため、対象とする企業を明確にし、そこに相応しいプロモーション戦略を立て、サービスの提供を行わないと顧問契約には繋がりません。
企業規模により弁護士に法的課題、期待することは異なる
日弁連の調査(「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」)によると、企業規模により、抱えている法的課題と弁護士に期待することは異なります(以下、調査結果をもとに吉冨が作図)。
このように、企業により抱えている法的課題と弁護士に期待することが異なるため、そこの把握をしておくことなく提案・対応することで、期待値とのズレが発生し、顧問契約や維持に繋がらない可能性が高まります。逆に企業のニーズや課題を把握し、適切な提案を行うことで、契約率を上げることは可能となります。
対象とする企業を明確にすることのメリット
企業法務分野のマーケティングを通じ顧問契約を獲得していく場合、このように企業が抱える課題やニーズに沿ったテーマをもとに、セミナーを企画し、ホームページでもそのテーマに合わせた記事を定期更新することで、集客に繋げることが可能となります。また、同じ企業規模や業種の顧問先数が増えてくることで、業務効率化ができるだけでなく、その分野における経験を加速度的に積むことができ、顧問先へのサービス内容を研鑽し還元することもできます。結果として、顧問継続率の向上や単価アップ、顧問先企業からの紹介に繋げることができますので、まずは顧問契約の獲得を増やしたい先生方は、自所の方針に沿って対象とする企業を明確にするところから始めてみてください。