2017年08月25日

士業事務所は資格の業際に捉われず強みを伸ばす

ほとんどの士業で資格者がここ数年で増加したにも関わらず、既存の市場は横ばいか縮小しているケースが多いです。
そのため、既存の取り組みの延長上で事務所の業績を上げることは困難なケースが増えています。
そのような市場環境下の場合、重要になるのは「専門性の深耕」となります。

市場が縮小している場合、様々な分野に手を出し易いですが、一つの分野もしくは絞った複数の分野を深耕させる上で、業務範囲を広げる戦略は成功し易いですが、専門性を深耕させず、空いている市場を探すように業務範囲を広げてしまった場合、多くの場合、失敗をしてしまいます

自事務所にとって参入障壁が低い場合は、他事務所にとっても同様の為、仮にブルーオーシャンを見つけたとしても、すぐに参入者が増え、レッドオーシャン化してしまいます。
専門性を深耕させ成功されている事務所では、専門性を深耕させたことで、新しい大きな市場が見つかり、更に業容を拡大できたというお話しが多いです。

2009年にアメリカ・ロサンゼルスにある全米で一番の労務問題に特化した法律事務所に発展の秘話についてお話をされた際「当初、労務問題に特化した法律事務所の規模は100人が限界だと言われていたが、専門性を深めた結果、新しい市場が見つかり、今では1000人規模にまで急拡大することができた。専門性を追求することで、更に市場を広げることは確実にできると思う」というお話は大変参考になる事例です。

また、税務訴訟に詳しい鳥飼総合法律事務所の鳥飼先生もご講演では「20年前、法律事務所として税務訴訟及び税務に関するアドバイス業務は成立しないと言われていたが、その分野の案件を繰り返し扱うことで、業容を拡大することができ、今では法律事務所にとっての一分野になっている」と話されておりました。
このようなお話は、今まさに日本の士業事務所に求められていることだと思います。

専門性を深耕する場合、注意すべきは「既存の業際に捉われず、市場のニーズに合わせて業容を拡大していくこと」です。
資格の枠組みに合わせて何ができるかではなく、市場のニーズに合わせて「できることを探していく」ということが重要となります。
例えば、飲食店の就業規則に詳しい社労士の方は、採用に苦戦していたある飲食店Aに対して「勤務終了時間を21時から20時30分に変更することで募集を増やすことができるかもしれません。」というアドバイスを行った結果、実際に3倍以上の応募を獲得することができ、飲食店Aの代表から非常に喜ばれており、顧問契約も相場の3倍近くで契約を継続されておりました。
この事例を「士業の業務範囲から逸脱している」と捉えるか「新しいサービスを開発できている」と捉えるかで、今後は大きな差が生じると考えられます。既存のサービスを深耕させ、専門性を深め、付加価値をどう増やしていくか、事務所を今以上に専門家集団化させるかどうかが、今後の経営を考える上で非常に重要だと考えられますので、事務所戦略を考える場合には、是非、ご参考にして下さい。

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担当:鈴木 圭介(スズキ ケイスケ)   株式会社船井総合研究所 士業支援部グループマネージャー
2007年船井総合研究所 入社。2012年チームリーダー昇格。2016年グループマネージャー昇格。 法律事務所向けコンサルティンググループにおけるグループマネージャー。 全国で120以上の法律事務所が会員として参加されている法律事務所経営研究会主宰。 実務に精通した提案は弁護士会からも評価されており、2015年に開催された第19回弁護士業務改革シンポジウム第三部会においてパネリストを務め、福岡県弁護士会「木曜会」、岡山弁護士会においても講演実績を持つ。マーケティングに関するコンサルティングのみならず、受任率の向上や業務効率の向上、パートナー制度に伴う評価制度の構築に関するコンサルティングも行っている。

士業コンサルティンググループ 鈴木 圭介(スズキ ケイスケ)

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