みなさまこんにちは!会計グループの山中章裕です。
8月23日~25日の3日間、船井総合研究所で最大のセミナーである第91回経営戦略セミナーが開催され、今回は過去最大6,000名を超える皆様にご参加いただきました。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございます。
私も初日の講座から3日間フルに参加させていただき、外部講師の方を中心に講演を聞かせていただきました。
すべての講座の内容をお伝えするのは難しいのですが、その中で見えてきた傾向と時流を8つのテーマに分けてお伝えしたいと思います。
①業務効率化と本業集中の方向性
(ソニックガーデン 倉貫氏講演より)
初日の講演となった、ソニックガーデン倉貫社長の講演を中心に感じたことです。
ソニックガーデンさんは徐々に進んできている“テレワーク”の一歩先を行くような、“リモートチーム”という新しい働き方を実現しており、本社なし、出社なし、という働き方を実現されています。
その働き方やITツールの活用など、参考になる点はたくさんあったのですが、そもそもの流れとして、“業務効率化”や“本業集中”のためにこうした働き方の改革が行われていることを感じます。
働き方の改革が進めば進むほど、間接業務の外注化や業務効率化のためのアドバイスといったニーズが高まるということです。
この間接業務の外注先としての士業事務所(特に会計事務所や社労士事務所)や、アドバイザーとしての役割がビジネスとして広がるように感じています。
②インターネットビジネス・マーケットの更なる拡大
(サイバーエージェント・クラウドファンディング 中山氏講演より)
皆様は、“クラウドファンディング”という言葉はご存知でしょうか?
インターネット上で、寄付や出資を募ることで資金調達する手法です。
以前より言葉や概念を聞いてはいましたが、現実的にどうやったらお金を集められるか?というイメージがあまり持てず、どう実現するのか?と思っていた分野です。
これを実現されているのが、『MAKUAKE』というサイトになります。クラウドファンディングサイト、というよりは“先行予約販売の形式をとった通販サイト”とイメージしていただいた方がわかりやすいかもしれません。
そこまでクラウドファンディングを落とし込めていることに驚くとともに、アイデアやイメージ、試作段階の商品でも売上が立ち、入金されるという先行収入型の新しいビジネスが展開できることに可能性を感じました。
活用の分野は広く、製造・小売や食品、飲食店など、インターネットで販売されているものについてはほぼ取り扱われており、売りながら商品の開発の意見をユーザーからもらってより良いものにすることができています。
売上が先に立ち、ユーザーの反応が見られるため、MAKUAKEでの実績を基に金融機関から資金調達を行ったりすることもできるという事例も出ています。 MAKUAKEというサービスの素晴らしさはもちろんのこと、インターネットビジネスはまだまだ伸びる余地があることを感じます。
どうしてもインターネットの分野を毛嫌いしてしまったり、馴染めなかったりする方もいると思いますが、インターネットでの集客・販売は、今後も間違いなく伸びる分野ですので、必ず皆様のビジネスの中に取り入れておきましょう。
③中小企業が主役となる世の中で、伸びる経営者に
(レオス・キャピタルワークス 藤野氏講演より)
中小企業向けの投資信託会社であるレオス・キャピタルワークス藤野社長の講演からは、
上場している企業の中で、千代田区・中央区に本社を置く大手企業よりも、それ以外のエリアや地方に本社がある中小企業の方が成長していた過去のデータから、中小企業に将来性や成長性を感じられるというお話をお伺いしました。
そして、藤野社長がこれまで投資し、実際にその成長を見てきた経験から、伸びる経営者の傾向として、「意思決定がシンプル」「目線が長期」「徹底した顧客目線」の3点が大事であること、逆に、「社長の自伝をプレゼントしてきたら、その会社は伸びない」「豪華な新社屋に入居した会社はその時点が業績や株価のピーク」「社長室が過度に豪華だったり、ゴルフのトロフィーがある会社はダメ」「ホームページに代表・役員の写真がない会社は、写真のある会社より伸びていない」など、独自の経験から出された傾向を教えていただきました。
上場企業の話ではありましたが、中小企業経営者としては通じる部分があり、よく意識しておく必要があると感じた内容です。
④正しい危機感と2017年から目指す成長ステップ
(船井総合研究所 中谷講演より)
中谷の昨年度の講演より、人材の採用や定着への課題が加速していることをお伝えさせていただきましたが、2017年は、①人材の競争のさらなる加速、②急速なデジタルシフト、③業界外からの業界破壊者といった新しい課題も出てくるようになったことをお伝えしました。
①人材競争については、採用ファーストで取り組みながら、ダイレクトリクルーティングの取り組みや未経験採用、働き方の多様化に対応することがポイントになりますが、確実に採用コストは上がってきています。
船井総研でかかっている実際の採用コストを例にとってもそのコストの上昇は見て取れ、2014年~2016年の採用コストの推移をみると実に152%も増加しています。
②急速なデジタルシフトとしては、これまでチラシ集客が集客の約半数を占めていた軽自動車販売業界においても、WEB集客が2倍になったり、経営戦略セミナーの参加申し込みも5%→35%と7倍に増加したりしています。
③業界外からの業界破壊者としては、世界的にはUberVSタクシー業界、AirbnbVSホテル業界、TeslaVS自動車業界などが例として挙げられます。
日本においても、セブンイレブンVSコーヒー業界、ZOZOTOWNVSアパレル、メルカリVSリユースなどの競争が急速に進んでおり、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの株価は一流百貨店の三越伊勢丹ホールディングスの株価の2倍以上になっています。
これまでは、地域一番、業界一番となればその横展開で安泰だった業界でも、これからは人的コストやデジタルシフトコストを吸収しながら、業界外との競争にも勝ち抜ける構造への転換(高収益ビジネスモデルへの転換)が必要になってきていることが示されました。
高収益経営を達成するためには3つのポイントがあり、①絞り込み一番化×独占シェア、②ストックビジネス化、③デジタルシフト・高生産性への追求といった点が挙げられます。
高収益経営に転換するタイムリミットは、①消費増税前およびオリンピック景気が終了する2020年、②団塊ジュニアが50代に突入し、企業の人件費がピークとなる2023年、③国民の3分の1が65歳を超える2024年という3つの理由から2023年頃を予想しており、それまでには高収益経営へと転換していく必要があります。
ただ、高収益経営を目指すにあたって、あくまで地域1番化が最優先です。1番化を達成したのちに、将来に備えて高収益化するというイメージです。
まとめますと、①まずは業績アップのソリューションを展開し、②(ほぼ同時に)採用ファーストで人材に投資、③(高収益化し)次の飛躍のために投資する、という流れをこれから作っていくことが重要といえます。
⑤お客様思考で考えたサービスに“気”を込める
(九州旅客鉄道 唐池氏講演より)
JR九州の会長である唐池氏の講演では、3つのテーマでお話をいただき、中でも、①夢見る力、②気を高める力を中心にお話ししていただきました。
夢見る力とは、どこに向かって進めばよいか?何を目標とするか?について大きな目標を描く大切さをお話しいただきました。
唐池会長のお話では、社長就任1週間で“ななつ星”という世界一の豪華寝台列車を走らせるという夢を描き、多くの方の協力と思いと手間をかけ実際にそれを実現させた経験から、思いと手間をかけることで、サービスに“気”が入り、それが価値となりお客様の感動を呼ぶことができることをお話しいただきました。
この“気”というのは、①夢見る力、②スピードあるきびきびした動き、③明るい元気な声、④スキを見せない緊張感、⑤よくなろう、よくしようという貪欲さにより高めることができるということもお話しいただきました。
JR九州は鉄道以外の事業が売上60%を占めており、各事業ともに外部に委託することなく、自ら研究を重ね、本気で取り組むことで結果を出すことができているということです。
唐池会長の講座からは、「大きな目標を持って経営を行うこと」、「思いと手間をかけて“気”を高めてサービスを行うこと」「“気”の入ったサービスは感動を呼び、成果につながる」という3つの学びを得て、私たちのサービスにおいても“気”を入れることの大切さを感じました。
⑥国家戦略としてのBPO・クラウド拡大
(マネーフォワード 辻氏講演より)
マネーフォワード辻社長からは、国家戦略として、IOT、ビッグデータ、人工知能、ロボットの導入促進が進められていること、また、中小企業が抱える人材問題や利益拡大、収益拡大といった課題解決のソリューションとして、①優秀な人材の確保とリソース不足には“クラウド化”、②社内業務の外部化として“アウトソーシング・BPO活用”、③付加価値創造として“オープンイノベーション(外部のベストケースの受け入れ)”という方法があることをお伝えいただきました。
また、経済産業省が発表しているFinTechVisionのKGIとして、①キャッシュレス、②サプライチェーンの資金循環速度、③バックオフィス業務のクラウド化率という3つの目標が立てられており、政策として今後これらの指標が増加していくことも解説いただきました。
実際にマネーフォワードが提供しているソフトやその他クラウドツールの情報をお伺いし、アウトソーシング・BPOとクラウドが今後ますます広がっていく時流にあることを強く感じました。今後この分野のサービスは伸びていくものと思われます。
⑦目に見えない心を大切に感じながら、公明正大に進める
(船井総合研究所 唐土講演より)
弊社唐土からは、時流予測☆2017年夏版として、今年の傾向と2017年後半に気を付けておくべきことについてお伝えさせていただきました。
2017年は、“丁酉一白水星”という年になるのですが、丁(ひのと)という漢字には、デンマークというという意味がありますが、デンマークとは幸福度ランキング1位の国であり、幸せを意味する言葉であるとのことです。また、酉(とり)は革命の年といわれており、今の働き方改革や今後の景気状況強が続くようであれば、その先にある生き方改革という人生について考えるような改革の岐路になる年であることも考えられます。
ちなみに、現在の景気状況が続くようであれば“生き方改革”へと進みますが、景気が悪化した場合、“稼ぎ方改革”に戻るであろうといわれていました。
一白水星(いっぱくすいせい)には、“水”の意味があり、“水害が多い”、“一所に止まると濁り、腐る”、“柔軟性が大事=押し付けたらダメ”、“メンタル面の出来事が多い”、“一からスタートする意味を持つ”という年となる傾向があります。
2017年後半のポイントとしては、
1.2017年前半リセットできなかった人は終わらせること
→思いやりを持ちながら丁重に扱う
2.2017年後半は考えるより感じること
→売る人の気持ち、お客さんの気持ちを感じる
3.自分にも他人にも嘘はつかない
→自己否定につながる(メンタル不調は自己否定感が強い)
4.経済的には回復しているように感じる
→商売がしやすい時代、上手くいっていない会社は流れと違う
5.人とのコミュニケーションを密に取る →対話
6.目に見えない心を大事にする
7.2018年の縮図は2017年10月10日~11月6日
8.公明正大を大事にする
(気を付けるべきこと)
1.下心
2.気の迷い → 自分の目標を自分で決める・経営の目標は幸せ
3.短気
ということでした。
唐土の講演のまとめとして、①人の心に気を配り、コミュニケーションを密に取る、②対立に注意する・大事にしない、③公明正大・嘘をつかない、④人生の幸せに目を向けて経営を行う、という4つの点について気を付けていただきたいと思います。
⑧新しいビジネスへのチャレンジと“気”を込めたサービス
(あすか税理士法人 川股氏講演より)
最終日に会計事務所分科会では、あすか税理士法人川股代表より、民事信託ビジネスについてのポイントから、税務上の解釈や事例に至るまでの詳細な実務の情報までお話しいただきました。
参加いただいた方からの満足度も非常に高く、大変学びの多い講座でしたが、川股代表のお話を聞いて下記のポイントを感じました。
①民事信託ビジネスは“気”が込められたサービスである
②クライアントのニーズを解決する(お客様のメリットとなる)サービスである
③新しいチャレンジを恐れていない
④民事信託はこれから伸びる(成功のパターンがある)
⑤まずは負担の小さいパターンから取り組んでみていただきたい
ということです。
新しいビジネスということで、リスクを感じる部分もありますが、やはりそこを開拓していくことで大きな成功やメリットを得られるということを強く感じた講演でした。
以上長文となりましたが、経営戦略セミナー3日間のまとめをお送りさせていただきます。
今回ご参加いただけなかった方も、来年はぜひ直接お越しいただき、講座をお聞きいただけると幸いです。
担当:山中 章裕(ヤマナカ アキヒロ) 株式会社船井総合研究所 士業支援部グループマネージャー |