こんにちは!船井総合研究所の稲冨です。
今年も残りわずかになりました。12月は税理士業界で非常に重要なイベントがありますね。
12月15日(金) 平成29年度第67回税理士試験の合格発表
です。会計事務所の皆さまに置かれましては、合格をしているかどうか気が気ではない15日間ではないでしょうか。もちろん我々も合格発表は大変重要なイベントなのですが、我々が特に気にしているのは最近の「税理士試験者数の推移」です。
資格者数こそ減っていませんが、受験者数は減少傾向です。直近5年間(平成23年~28年)では約15,000人(25%程度)の受験者数が減少しており、平成29年度においても試験申込者数ベースで、約2,500人減少をしています。税理士業界としても、この受験者数の減少は非常に危惧すべき事態です。税理士を目指す人が減少しており、その結果として、今後の会計事務所経営に大きな影響を与えるのではないでしょうか。
特に「人材面」の戦略を見直す必要があると考えています。
そこで今回は、この税理士受験者数減少時代だからこそ打つべき「人材戦略(採用・定着・育成)」についてお伝えします。
<採用>【会計事務所の採用は資格者・経験者即戦力型採用から未経験者育成型採用へ!】
現在、多くの事務所様が採用を「資格者・経験者即戦力型採用」から「未経験者育成型採用」へ切り替えています。受験者数の減少はもちろんのこと、有効求人倍率の上昇で経験者採用は非常に厳しい状況です。そこで、今後はこうした状況を考慮し、未経験者を採用し、育成をしっかりと行い、戦力化させていくことが必要となってきています。
そして、採用戦略の切り替えを行うと同時に採用手法も変える必要があります。今後は求人媒体や紹介会社、ハローワーク頼りの採用ではなく、indeedなどを活用した「ダイレクトリクルーティング」への切り替えが必須です。待ちの姿勢ではなく、事務所側から積極的に情報発信などを行い、直接応募者を獲得できるような動きをしなければ、今後は採用弱者となっていくのは明確です。自社採用サイトの構築とindeed・SNSの活用など、時代の変化に適した採用を行っていくことが重要となります。
<定着>【採用後の人材定着が最も重要! 離職を防ぐ仕組み作りを!】
採用をした後に重要なことが「人材の定着」です。定着しない理由を分類すると、Aグループ「仕事・事務所の将来・働く環境」Bグループ「賃金、処遇・人間関係・自身の将来性」の2つに分けることができます。この2つに対処するためには、
Aグループ=中期ビジョンの明確化
Bグループ=組織化・人事評価制度・管理職育成
により解決することができます。
将来のない・分からない事務所の定着率が上がることはありません。そして、自身が将来どのようになるかをイメージできなければ、当然将来を考えて不安になります。
こうした場合、まず優秀な社員から抜けていくことになります。優秀な社員が定着しない事務所の場合、中期ビジョンの見直しもしくは組織化、人事評価制度の構築していくことが必要になってきます。
<育成>【戦力化までの人材育成法は完全個別対応が基本】
採用後は、育成をどのように行うのかがポイントです。ここでよく私は「研修を受講させることが目的になっていませんか?」と質問をしています。研修に参加することが悪いわけではありませんが、研修に出すこと自体が目的になっているケースが非常に多く見受けられるからです。目的・目標がない研修はただの「受けさせられている」研修になってしまい、吸収力が悪くなるため注意が必要です。
そこで、今後の育成のポイントは、「脱研修参加目的化」を行い、「完全個別対応」の人材育成です。完全個別対応とは、個々人ごとに、入社後すぐに人材育成プログラムを立案し、個別面談を通じて1年後の到達目標を設定した上で、業務・研修を行っていくというものです。未経験者は、経歴も当然様々なので、個々人に合った育成をしていかなければなかなか即戦力化していきません。
そのため研修に参加させるだけの育成ではなく、人材育成プログラムを構築した上で研修に参加することをおすすめしています。
いかがでしたでしょうか?
良い人材を採用するための採用戦略の見直し、定着させるための離職を防ぐ仕組み作り、そして完全個別対応で戦力化のスピードアップが必須となってきています。
税理士受験者数減少時代だからこそ今後はより「人材面」に力を入れることが必要な時代となっています。