皆さまこんにちは。法律事務所コンサルティングチームの阿部悠紀です。
今回は「成熟期に意識すべきマーケティングの3つのポイント」についてお伝えさせていただきます。
某法律事務所の景表法違反にともなう業務停止命令を受け、債務整理事件を扱う事務所を中心に、各地で少なからず影響が出ています。「処分が重すぎるのではないか。」といった意見も多いですが、法律事務所のインターネット広告が一般化した現在において、改めて顧客との関係構築について考えさせられる機会となった方も多いのではないのでしょうか。
非常に興味深いのは、「弁護士を変更したい」「今後の進め方を相談したい」と他の事務所に流れてきている相談者の方が、これまでその事務所で受任できていた層よりも、弁護士報酬が高くなりやすい傾向にあるということです。特に、債務整理事件のような、成熟している分野(需要に対して、集客をしている事務所が多い状態)においては、その特徴が顕著に表れるようです。
成熟期に意識すべきマーケティングのポイントは以下の通りです。
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- 販促による差別化が難しくなり、商品力・サービス力で差が出るようになる
需要に対して供給が上回る成熟期においては、販促(ホームページや広告等)による差別化が難しくなります。特に、WEBマーケティングは模倣されやすい特性がありますので、販促以外の部分、商品力(弁護士のアドバイスの的確さや適正な価格設定など)やサービス力(事務所全体の接客力や専門家を紹介できるなど)での差別化を図る必要があります。
これらは一朝一夕ではいかないところがありますので、伸ばしやすい時期に多くの事件処理をこなす中で、事務所全体の対応力を高めていく必要があります。
- 「地域一番」の状態を再定義し、戦略的にリソースを配分する
成熟市場においては、地域一番の事務所に案件が集中する傾向が強まります。また、総合的に品揃えをする事務所よりも、専門店に人が集まる現象もより強くなります。この傾向は、法律業界より進んでいる、飲食業や不動産業を見ていただければ明らかです。
事務所として、分野ごとの「地域一番」の状態を定義(たとえば、離婚で年間100件の受任をする、交通事故の後遺障害認定サポートができる商圏内唯一の事務所になるなど)していただき、その実現に向けて、リソースを戦略的に配分することが求められます。状況に応じて、戦略的に撤退を検討する分野が発生するかもしれません。
- 独自の事件処理方針を確立する
競合が急激に増え、他事務所との差別化が難しくなる成熟期こそ、事務所としての独自性を追求する必要があります。特に、法律事務所の場合、「事件処理方針」を明確に打ち出している事務所はまだまだ多くありませんが、依頼を決めるきっかけの一つとして、方針が明確であるかどうかをあげる顧客は多いです。
他事務所と比較されることを前提とすると、メインとしたい顧客層を絞り込み、その方が最も欲するサービス、メッセージを打ち出せるかがより一層重要となります。
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成熟期は「本物の時代」と言い換えられるほど、良いサービスが残り、悪いサービスが淘汰される二極化の状態が加速します。成熟期に意識すべきマーケティングのポイントをおさえ、顧客から選ばれる事務所作りをしていただきたいと思います。