2021年06月03日

士業事務所が急成長を実現するためのM&A戦略

士業事務所は、今こそM&A・事業承継・経営統合戦略を事業計画に組み込むべき

この10年で、全ての士業において大規模化が進みました。また、M&Aを行う事務所が増加し、まだまだ数は少ないですが、以前に比べると士業事務所のM&Aは大幅に増加しました。最近では、司法書士業界での動きが大きく、業界TOP5の規模にランクインされていたAIグローバル様が、二つの法律事務所と合併され、キャストグローバルグループ様となりました。また、当社が開催している経営戦略セミナーにおける士業分科会でご登壇頂きました中央ライズアクロスグループ様も開業5年弱ですが、M&Aを積極的に実施され、現在では総勢170人と先日伺いました。

大規模化の背景としましては、従来業務領域においては、規模のメリットがより出易い環境が整っているという点が挙げられます。

1 マーケティングの観点:WEBマーケティングを中心としたメディアの影響力が増しており、多様なメディアの活用と精度向上への投資が、顧客開拓力を各段に高めることができる状況です。

2 業務効率化の観点:テクノロジーの発達によって、テクノロジーへの投資額に比例して、効率化が進み、従来からあった大規模化による大量案件処理による効率化との相乗効果で、大規模化のメリットは更に高まっている状況です。

3 採用の観点:受験者数の減少により、優秀な資格者数は減少しており、上記1、2の影響もあり、大規模事務所の方がより有利な状況になっています。また、専門性の観点においても、テクノロジーを活用したナレッジの集積も進みつつあり、教育・育成体制が整うことで、採用面での競争力を高めている状況です。

また、承継案件の増加と承継の低年齢化(事業転換)が進み、M&Aの機会が増加するため、M&Aを実施し易い大型事務所が市場を寡占する動きは加速すると考えられます。

勿論、むやみやたらに大きくしましょうということではありませんが、規模を大きくすることのメリットが大きくなっており、M&Aがより、活性化することが想定されるため、今後、事務所の成長戦略を描く上では、選択肢の一つとしてM&A・経営統合戦略を組み込んで頂きたいと思います。また、M&A・経営統合の経験がある事務所様は、まだまだ少ない為、早い段階で経験をすることで、その経験自体が、今後の強みになると考えられます。

現在、M&A・経営統合を実施されて大きくなっている事務所様のお話を伺うと、規模大きいから実施するのではなく、実施したら規模が大きくなっているケースの方が多く、規模の大小に関わらず、M&A・経営統合を視野に入れていたことが重要だと考えられます。また、M&A自体の成立・不成立は譲受側の譲受バリエーションの多さに連動して増加しますので、経営戦略に幅を持ち、柔軟に対応することが大事だといえます。
今後、M&A・経営戦略を視野に入れる上では、買い手に回る際に見るべき観点としては、
1 M&Aを行う基準を決めておこう
2 投資余力及び財務状況を把握する精度を高めよう
3 経営者としてその組織を任された際に業績を上げるイメージで判断しよう
4 既存組織のビジョン浸透及び経営者と現場のビジョンのギャップを把握しよう
が挙げられ、売り手に回る際に見るべき観点としては、
1 企業価値を更に高めるために業績をより伸ばそう
2 自社の価値を把握しておこう(一度、測って見ることも重要です)
3 特徴・強みをより明確にしよう(あればあるほど、価値が上がり易い)
4 労働環境を再整備しよう
といった点が挙げられます。

M&Aの実施の有無に関わらず、改めてM&Aを視野に入れて頂き、経営戦略の一つに組み込んで頂き、新時代を勝ち抜いて頂きたいと思います。

船井総研では、財務状況分析、組織分析、M&A経営戦略の構築に関するアドバイスも行っておりますので、お気軽にお声掛け下さい。

【この記事を書いたコンサルタント】

シニア経営コンサルタント 鈴木 圭介(すずき けいすけ)

2007年船井総合研究所 入社。2012年チームリーダー昇格。2016年グループマネージャー昇格。 法律事務所向けコンサルティンググループにおけるグループマネージャー。 全国で120以上の法律事務所が会員として参加されている法律事務所経営研究会主宰。 実務に精通した提案は弁護士会からも評価されており、2015年に開催された第19回弁護士業務改革シンポジウム第三部会においてパネリストを務め、福岡県弁護士会「木曜会」、岡山弁護士会においても講演実績を持つ。マーケティングに関するコンサルティングのみならず、受任率の向上や業務効率の向上、パートナー制度に伴う評価制度の構築に関するコンサルティングも行っている。

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