2021年04月28日

50人の壁を突破するために必要な「カルチャー経営」

士業界では大型化が進んでいると言われて久しいですが、50名を超える規模になれる士業事務所は1%以下。
100名を超える規模になれる士業事務所はわずか120弱しかありません。
独立をし易い事業モデルであり、独立する文化があり、独立の志向性を持っている方が多い等々、様々な理由で、士業事務所の大型化は難しく、大型化した場合のメリットも大きい世界です。
 
士業界のみならず、企業の世界にも50人の壁が存在しており、多くの経営者がその壁を突破するために苦労されています。
また、新しい時流として「人材の流動性」が高まっており、その流れにどう対応するかも持続的な成長を実現する上では重要な観点となっています。
今の人材の流動性のトレンドを抑えることも今後のお話に繋がりますので、先んじてご説明をさせて頂きます。
 
トレンドを掴む上で重要なキーワードは「就社」ではなく「就職」という意識の高まりです。
終身雇用が見直され、入社した大半の人が役職者になり、給料も年々上がるということが、困難になり、
事務所及び企業側もより高い専門性を持った人材が必要になった時流に適応すべく、
生涯その会社にかけるという発想から「職」として技術を学び、実務スキルを習得し、自分の能力を活かせて、高めることができる職場を選ぶようになりました。
ジョブ型採用という言葉も増えていますが、まさにこのような現象を指しています。
 
大手企業ではこの変化にいち早く対応しており、大枠としては新卒一括採用に見えますが、実際には採用する側もされる側も職種を細かく指定しています。
有名企業ではソニーが80種類以上のジョブに適正な人材を採用する方式を取り入れており、学生からの高い評価を得ています。
勿論、それは大企業だからできる細かい設定ですが、企業規模に関わらず、どのようなスキルが身に付くか、
どのような特性がある人材が欲しいかという明確な発信をすることは、取り入れ、実行して頂きたい施策です。
 
ジョブ型採用を実現し、特定人員にノウハウが偏ってしまうと、
いわば属人化してしまい、事業経営上のリスクが高まってしまうという観点も避けなければならない重要な視点です。
このようにマネジメントが複雑化する状況下の中で、大きく成長をさせている事務所や企業は今何にこだわっているのか、
その答えが「カルチャー経営」です。
 
カルチャー経営とは、カルチャーが最上位にある経営手法で、代表よりもカルチャーの方が上位にあります。
代表はカルチャーを最も体現しているから代表であり、実現する上で代表が必要なため、
代表でおられ、逆に反してしまう場合は代表を退く、というレベルでカルチャーを大事にするという経営手法です。
従来から大切と言われてきましたが、就社をせず、ジョブで動く方達は、どの文化で働くかが判断基準になっており、
その会社に対するロイヤリティーは、カルチャーが自分に合うか、そのカルチャーが好きかということが重要であり、
その徹底度合いが、今までとの違うだと考えられます。
実際に大きくなっている事務所や企業の方とお会いすると、その会社らしい言葉や雰囲気を社員は持っており、職場が好きだという気持ちが表れています。
 
50人までの組織ではトップとの飲み会やコミュニケーションでなんとかなることが大半で、
その方式が最も早く効果的だと話されていますが、50人以上では通用しなくなると50人以上の組織を持つ経営者は話されています。
事業規模に関わらず、持続可能な成長をするために、まずは「カルチャー」を定義し、
自分達が何を目的として、その事業をしているかを定めることが、優秀な人材の確保と持続的な成長には必要な方法となります。

【この記事を書いたコンサルタント】

シニア経営コンサルタント 鈴木 圭介(すずき けいすけ)

2007年船井総合研究所 入社。2012年チームリーダー昇格。2016年グループマネージャー昇格。 法律事務所向けコンサルティンググループにおけるグループマネージャー。 全国で120以上の法律事務所が会員として参加されている法律事務所経営研究会主宰。 実務に精通した提案は弁護士会からも評価されており、2015年に開催された第19回弁護士業務改革シンポジウム第三部会においてパネリストを務め、福岡県弁護士会「木曜会」、岡山弁護士会においても講演実績を持つ。マーケティングに関するコンサルティングのみならず、受任率の向上や業務効率の向上、パートナー制度に伴う評価制度の構築に関するコンサルティングも行っている。

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