法律事務所コンサルティングチーム 吉冨 国彦(よしとみ くにひこ)
初めまして!
士業経営支援部 法律事務所コンサルティンググループの吉冨です。
私は4月11日付で法律事務所コンサルティンググループに配属となり、
中途入社致しました。前職は大手教育会社で留学部門の営業部責任者をしていました。
営業職として新卒から9年間を過ごしていましたので、
トップ営業の育て方や組織の作り方を中心としながらも、
営業部の事業計画策定や新商品開発、人材の採用・育成・定着も携わっていました。
今後は前職の経験を生かし、士業事務所における受任率をはじめとした
生産性の向上に貢献できるように頑張っていきたいと思っています。
当面は企業法務の分野に注力をさせて頂く予定となっていますので、今後とも宜しくお願い致します。
そして第1回目の今日は「顧客目線で実践する受任率を高めるための4つのポイント」
について書きたいと思います。
私は前職、教育関係の企業で営業職ならびに部門責任者として働いていた経験があります。
顧客は主に高校生~社会人までで、toC(対個人)としての営業を行っていました。
教育に関しても「目に見える商品を扱っている訳ではない」ため、
弁護士をはじめとする士業の先生方と同様、口頭ベースで相談者に説明や提案を行い、
受任に至るケースは教育と似通っている部分があると感じています。
例えば、プリウスという車が欲しい場合、
どの担当者がプリウスを売っても性能や費用対効果は変わりません。
一方、目に見えないサービスを提供する場合はそれを提供する人自身が商品となる訳で、
その見えないものを受任(購入)して頂くためには
受任率の改善に対する意識や具体的な行動に落とし込む必要があります。
この面談からの受任率に関しては先生によって大きく結果が異なります。
面談受任率は相談事由や相談者のニーズの度合にも寄りますが、
10%以下~50%以上に及ぶ先生までいらっしゃいます。
なかなか受任に至らないケースが続くことで「受任のイメージ」逃してしまい、
安定的な面談をすることが難しくなる場合もあります。
前職の教育の営業でもトップ営業マンと一般社員での面談からの成約率は大きく差異がありました。
平均値は40%程度ですが、新入社員で経験値の浅い人や
あまり相談者目線の提案ができていない人は20%を切ったりしますが、
逆にこれから書くことが抜け漏れなく出来ている人は
60~70%まで成約率を高めることが出来た人もいました。
以下に成約率を高めるための取り組みや考え方、
士業の場合であればどういった内容になるのか書きます。
まず、成約率の高いトップ営業に共通していることを箇条書きします。
・「説明ではなく提案」をしている。
・「事例に合わせたアプローチブック」を作成している。
・「相談者とのコミュニケーション」を大事にしている。
・悩んでいる人の背中を「プッシュ(クロージング)」する。
(1)「説明ではなく提案」をする
相談に来られた際、法的な問題や今後の手続き、
料金体系や今後の流れだけを説明する先生もいらっしゃるかと思います。
もちろん、緊急性が高くニーズが顕在化している方(たとえば、DVを受けていて
一刻も早く離婚をしたく慰謝料を請求したい)などは、こちらからクロージングをかけなくても
「どうすれば次の相談や手続きに勧めますか?」と聞いてくるはずです。
しかし、緊急性が高くない方(相談や情報収集ベース)やニーズが顕在化していない方に
は説明だけしていても受任はして頂けません。
何か思い当たることがあり来所して頂いているはずですので、改めて顧客の悩みをヒアリングし、
その悩みを先延ばしにするのではなく、先延ばしにすることのデメリット
(例えばDVによるマインドコントロール)や、
いま解決することのメリット(例えば早期に別居を開始することでの婚姻費用の分担請求など)を伝え、
いま受任頂けるように仕向けること(提案)が大事になります。
前職でも成約率の低い社員はマニュアルに沿った説明や、
インターネットで調べれば出てくる情報の提供にのみ終始してしまい、
顧客は情報収集できたことに満足するだけで自社の商品購入までは至らず、
リリースしてしまっているケースが多く見受けられました。
(2)「事例に合わせたアプローチブック」を作成する
弁護士や法律事務所は個人にとっては普段あまり関わることがなく、
問い合わせをする人も慣れていることはあまりありません。
「どれぐらいの費用がかかるのか」「本当に解決ができるのか」
「他にどんな弁護士がいるのか」など不安に思うことは多々あります。
そのため、アプローチブックを作成し、これまでの事例を紹介したり、
料金や今後のスケジュールを明示、可視化して安心感を持ってもらい、
事務所にいる弁護士の紹介に関しても「弁護士になろうと思ったキッカケや理由」、
趣味や特技、これまで解決した事例と相談者の声などを盛り込むことで、
不安に思っていたことがクリアにしてもらえることがあります。
口頭ベースではその場では分かったつもりになっても、
目に見えるイメージがない場合はやはり決断できない、という方も多いのではないかと思います。
前職でもトップ営業は、相談者のニーズに合わせたアプローチブックを数種類用意し
場面や相談者の属性に合わせて使い分けをしていました。
固めに話した方が良いために文字が多いアプローチブックにしたり、
緊張を解くためにイメージ写真を沢山使用したアプローチブックにしたりしていました。
作成するのは面倒なのですが、いくつか種類を持ち、
相談者に合わせて使い分けることが顧客目線の提案が出来るのではないでしょうか。
(3)「相談者とのコミュニケーション」を大事にする
既述の「説明ではなく提案をする」にも通じますが、
あくまでも相談者が求めていることは目に見える商材ではなく、
先生による「目に見えない法的サービス」です。
そのため、「この先生を信頼して進めれば大丈夫」と思ってもらえるような面談をする必要があります。
信頼感を得るためにはお客様とのコミュニケーションを大事にし、
「ラポール」を取る必要があります。
「ラポール」とは相談者と被相談者の間に、相互を信頼しあい、
安心して自由に振る舞ったり、感情の交流を行える関係が成立している状態のことを言います。
具体的には相談者の言っていることを「違う」と思っても否定せず、
いったん受け入れる姿勢を持ったり、不安を抱いている相談者の発言に対して
大きく相槌や頷きを示すことで安心感を与えることにも繋がります。
また、質問をする際にも「はい」や「いいえ」で答えるクローズドクエスチョンは止めて
、「なぜ○○しようと思ったのですか?」といったオープンに話してもらえるような質問の仕方も大事です。
その他にもアイコンタクトや身振り手振りなど、
コミュニケーションを取る際のテクニックも意識的に駆使することで
コミュニケーションは改善し受任に至る可能性は少なからず改善できるはずです。
また、対面している時だけがコミュニケーションの場ではなく、
事務所に来られる前や、お帰りになられた後の連絡も大事な要素になります。
例えば、アポから事務所に来られる前に来所頂く日時と場所、
説明内容を記載した招待状を発送する際に一言でも良いので直筆でのコメントを書いたり、
お帰りになられた後は説明内容のリマインドを兼ねた内容や
コメントを書いたお礼状を送付するなども忘れてはいけません。
そういった心配りや気配り1つが「目に見えないサービス」を購入する際の
大きな動機づけになることは間違いありません。
(4)悩んでいる人の背中を「プッシュ」する。
事務所に来られる方は離婚や交通事故、相続などに関する問題や悩みを抱えています。
その悩みをクリアにするために来られる方、具体的な手続きに移りたい方、
単に情報収集で来られる方もいらっしゃるかと思います。
ただ、悩みや不安がないことには事務所に来ないと思われますので、
(1)にも通じますが説明だけに終わらず、提案を行い、
次の一歩を踏み出すためのプッシュをすることが受任率を高めるポイントとなります。
中には受任をして頂くクロージングをする際に「断られてしまうのは嫌だな」や
「他の事務所を検討するので」と言われた際の切り替えしトークに自信がなく、
強くプッシュできない先生もいらっしゃるのではないかと思います。
これは前職の営業にも共通していて、断られることを怖がる営業マンはプッシュが弱く、
せっかく良い提案ができても結果的に成約に至らないケースが多くありました。
説明でなく提案をすることと同様、プッシュせずに受任頂くことを「待ちの姿勢」で
対応するとせっかく温度の高い面談ができても流れてしまうケースもあると想定できます。
あくまでも、相談内容をもとに相談者が今後の手続きや料金、
他事務所比較などもクリアになった上で受任に至るのですが、
「情報収集や相談はいったん終えて、具体的な手続きに移りましょう」という
コミュニケーションをしっかり取った上でのプッシュ(クロージング)を意識的に行ってみて下さい。
情報量が多くなるため、今回は「受任」のフェーズに特化して書きましたが、
その他のフェーズにも取り組むべき項目がたくさんあり、
いかに問い合わせからの「アポ獲得率」や「事務所への来所率」など
各フェーズの営業率を1%でも改善できるかを意識して取り組むことで
最後の受任に至る数も変わります。
お問い合わせからのアポ率の改善、来所率の向上などに関してもご相談にのることが出来ますので、
ご興味・ご関心のある方はぜひお問い合わせ下さい。
吉冨 国彦(よしとみ くにひこ)