船井総合研究所が業績を把握している事務所の約90%は2019年度の売上は維持~増加というアンケート結果でした。これは業界全体の基準ではなく、経営に関心が高く、マーケティングに関しても意欲の高い事務所の結果となります。2018年度に比べると大幅な売上増加を実現された事務所が減少しており、業界全体としては成長期~成熟期のライフサイクルに入っていると考えられ、今までとは違う戦略を描く必要が出てきています。
法律事務所業界における成熟期では「販促の差」よりも「サービスレベル」の差がより経営に影響を与え、「早期育成体制」「人材定着率」「トップラインの引き上げ」が業績及び利益率を左右します。また、各分野において細分化した専門性を持たれる弁護士が増え、専門性を深堀した結果として新マーケットを創出し、更に伸ばすという好サイクルが一部の事務所でははじまっています。
2020年に起こると予想される変化としては、
・交通事故分野は二極化から、撤退事務所の増加と共に一強百弱傾向に変化
・家事分野は前段階での競争が主戦場に変化。販促方法の最適解も変化
・企業法務分野は分野ブティック型・業種ブティック型が伸び、総花型の厳しくなる。
・リーガルサービスの可視化及び定義化が進み、多様化・複雑化する。
・デジタルシフトをせざる得ない事務所が増加し、結果として、シフトが進む。
・採用は弁護士のみならず非資格者においてもより困難になる。
といった事柄が挙げられます。
2020年法律事務所事務所経営を考える上では「事業性」の側面をより強化していく必要があります。弁護士職務規定・倫理規定を大切にしつつ株式会社とは異なる「独自ポジションでの事業化」を強みとして伸ばすことが必要です。
また、法律事務所としてのサービス・事業自体の強みを最大化するために「独占領域」を更に磨き込み、同時に「非独占領域」へのチャレンジを行う、将来投資を行うことが重要になります。投資領域と回収領域のバランスを取り、利益率は全体で整合性を取る経営が必要になります。
既存のサービス分野の競争はより激しくなるため、独自領域の開発にどれだけ投資できるかが、重要な一年になると考えられます。