2019年07月04日

士業の強みは「〇〇」最大限に活かすための3つのポイント

「先生方の事務所の『競合』はどこですか?」

最近、支援先事務所の所長先生に表題のような質問をすることがあります。
 
「え!?〇〇(同業)事務所でしょう?」という回答ももちろんありますが、
勘の鋭い先生は「他士業や他業種も自事務所の競合だ」と捉えているようです。
 
私がメインでご支援している相続分野に注力する士業事務所の先生から返ってくる答えは
「司法書士、行政書士、税理士、弁護士」などの他士業や
「金融機関」などが良く挙げられます。
 
私が上記の質問をする様になったのには理由があります。
先生方の「競合」の捉え方次第で今後数年先も事務所が勝ち残っていけるか、
業界全体が成長するか衰退するかに大きく関係すると考えているからです。
 
以下では例として、私がメインでご支援している相続分野の話を挙げながら、
お伝えしていきたいと思います。
 

トレンドキーワードの奪い合い 業際のボーダレス化

船井総合研究所には様々な業種のコンサルティング部隊があり、
数多くの経営者向けセミナーを開催しています。
 
「どのようなセミナーが集客に成功しているのか」、
つまり、全国各業種の経営者が今興味を持っているテーマや成功事例が分かるのですが、
「相続」を切り口にしたセミナーが、士業以外でも増えてきています。
 
その中でも、特に「相続」切り口のセミナーが増加&集客好調である業種が「不動産」です。
 
不動産会社が「相続」というトレンドキーワードで集客し、
生前の土地活用や相続発生後の不動産の売却案件獲得を主な狙いとし、
それ以外の相続相談は地域の士業に紹介することで、
「1件の不動産オーナー案件で数千万近い手数料を得られた」という事例が紹介されていました。
 
同様の取組みを金融機関、保険会社、葬儀社、介護施設など他業種が行っています。
 

「競合」の強みはブランドネームと資金力

上記の通り、相続分野を巡る競合環境は、
士業だけでなく、不動産会社、金融機関、保険会社、葬儀社、介護施設などと
参入する企業数も増えているので益々厳しくなってくることが予想されます。
 
それらの競合は、概ね士業事務所よりも地元商圏における認知度が高く、
更に士業よりも売上額が多いなど資金力も豊富にあることが強みです。
中でも、不動産会社などは士業で得られる利益の100倍程度と桁違いです。
 
その為、販促活動では士業の何倍もの販促費用を掛けて露出を増やし、
エンドユーザーの獲得を試みています。
 
一方で、ブランドネームと資金力で劣る士業事務所はそれら「競合」に対し、
何を強みとして太刀打ちするべきなのでしょうか?
 
私は士業の「信用力」だと考えます。
 

士業の強みは「信用力」どう活かすべきか?

国家資格としての士業資格に対するエンドユーザーからの信用は絶大です。
例えば、我々の医者に対する信用を考えていただければ分かりやすいでしょうか。
医者に対しては、病気を治すという目的の為に、
自身の身体のことや精神面をできるだけオープンにすると思います。
 
一方で、ファイナンシャルプランナーの悩みは、
見込み客が自身の資産状況を開示してくれないという事です。
エンドユーザーの心理的には、
保険商品を売られるのではないかという疑念があるので、
安心して情報を開示できないのだと思います。
 
不動産会社もエンドユーザーの信用力が低く、
そもそも集客ができないという点が悩みの様です。
 
例えば、士業事務所が不動産会社と共催でセミナー開催をする場合の集客力は、
士業単独で開催する場合の集客力に比べ圧倒的に低くなります。
理由は上記と同様です。
 
先生方に相談する為に来所される方々の殆どは、
相談の中で財産や資産状況を開示されることが当然でしょうし、
相談会を開催すると一定数は集客できるのですが、
その数に他業種はいつもビックリされています(自分達にはそれ程集客できない)。
 
そんな士業の「信用力」をどう活かして、他業種にも負けない経営を行うべきか、
3つのポイントを示したいと思います。
 

1.エンドユーザーの相談窓口機能の強化(初回相談の獲得)

前述の通り、同業だけでなく他業種も含めてトレンドキーワードで集客を行い、
「相談窓口」としての機能を奪い合う状況です。
 
自社商圏内で、エンドユーザーからの初回相談を獲得する
「相談窓口」としての機能は絶対に譲ってはいけません。
 
例えば、WEBサイトなどでも
「〇〇+地域名(+相談)」などのキーワードで1位表示をキープする、
地域紙媒体の露出を増やし、どこで探しても自社が一番に来るという状況を作る必要があります。
 

2.一人当たり受任額を最大化する(≒顧客生涯価値の最大化)

上記の1を実現させるためには、一人当たり受任額を最大化する必要があります。
つまり、「〇〇+地域名(+相談)」などでの集客を最大化させるためには、
その分販促費用も掛かりますが、その投資ができるだけの「回収見込」が無ければ継続できません。
その為には、平均受任単価を現在の数倍、数十倍に上げていく必要があります。
 
相続分野で例えると、相続登記(約8万円)でなく、
遺産整理(約40万円)として受任する確率を上げる、
相続財産以外の名義変更にも対応する(約20万円)、
売却予定の不動産売却代理サポートを行う(売却価格×1.5%)ことで、
一人当たり受任額で100万円を超える案件を獲得することで、
投資に見合う売上を上げていくことができます。
 
前述の通り、先生方に対してほぼ全ての情報を開示している顧客に対して、
提案できることは沢山あるはずです。
 
「士業事務所としてできる事」として考えるのではなく、相談者が困っていること、
やってあげた方がいい事という顧客視点で考えて対応することが、2のポイントです。
 

3.相談振り分け機能強化(他業種との連携強化)

上記の1を実現できると、自事務所のメイン業務以外も相談されることが増えるでしょう。
そうなった際には、「自事務所では対応不可」と追い返すのではなく、
相談内容に適した専門家をしっかりとマッチングさせるところまで実行したいところです。
 
何故なら、紹介を受けた他企業からは紹介手数料や紹介案件などで返してもらえるでしょうし、
エンドユーザーを直接集客できている自事務所の強みに着目され、
連携を打診してくる企業も増えてきます。
 
連携先企業が抱える見込み客の紹介や、
セミナー共催なので共同マーケティングができるなど、
多くのメリットを享受できます。
 
 
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【この記事を書いたコンサルタント】

シニア経営コンサルタント 川崎 啓(かわさき けい)

新卒で株式会社船井総合研究所に入社後、多岐に渡る業界の経営コンサルティングに従事した後に、司法書士事務所専門コンサルティングチームへ。 現在は、全国20を超える司法書士事務所の経営サポートを行っており、その大半は相続業務を基軸に業績アップの提案を行っている。 WEBや紙媒体を駆使して、一般顧客からの受任を獲得するダイレクトマーケティング支援はもちろん、遺産整理や遺言執行などの業務導入を促進し、相続平均受任単価を倍増させる支援や、早くから成年後見業務の社会性、将来性、収益性の可能性を感じ、ご支援先に対して後見業務を切り口とした介護関係チャネルの営業支援を行い、業績アップ、永続成長事務所創りをお手伝いしている。 司法書士の社会的地位の向上を後押しすることをミッションとして、日々経営サポートに励んでいる。

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