2020年06月22日

新型コロナウイルスを機に成長戦略を描く上での5つのポイント

感染者数は増減を繰り返しており、精神的には、安心しきれる状況下ではありませんが、新型コロナウイルス関連の規制緩和は進み、日常生活が戻りつつあります。当初の予想通り、短期的に解決することは難しく、新しい価値観や新しい生活様式が生まれ、今後定着していく可能性が高い状況です。士業業界全体では、業種や分野に差はありますが、飲食や観光業といった壊滅的なダメージを負った事務所は少なく、緊急事態ということで、相談件数を増やし、顧問先件数を増やした事務所も多くおられます。アフターコロナ時代に適した新しい戦略を描き、事務所の発展を加速させる上での重要な5つポイントについてお話をさせて頂きます。

1.伸びる分野・サービスへの転換

休業対応・助成金アドバイスといったコロナウイルスに伴い急激に伸びた分野から、ウイルスに関連しながらも継続的に相談の発生するリモートワークアドバイスへのシフト。景気後退に伴う資金繰りや企業再生、法人破産、整理解雇に関する情報発信を強化し、事務所の売上構成比を意図して変えていくことが重要です。

2.勤務形態の多様化への対応

価値観の変化により、より多様な働き方への意識が高まりました。不景気になることで人材不足の問題は改善されると予想されますが、優秀な人材を確保する困難さは変わらないと考えられます。勤務形態の多様化が優秀な人材の確保に直結する状況ではありませんが、より多くの方に就職を希望して頂くことは重要な事柄です。また、事業リスクの観点から考えてもリモートワークへの対応、分散出勤を実施できる体制を作ることは重要です。

3.非対面でのコミュニケーションの強化

交流会やセミナーを中心とした対面での案件開拓・ルート開拓は、今後も長期間制限がかかる可能性が高く、頻度も従来の水準に戻ることは無い可能性が高いと考えられます。オンラインセミナーの強化、オンラインでの営業、オンラインでの契約を、効率的・効果的にできるようになるかどうかは重要です。また、SNSの活用を中心としたオンライン上での人脈形成の重要性はより高まると考えられ、武器にすることは非常に重要です。

4.デジタル資産及びデジタルシフトの強化

見込み客リストをデジタルデータ化されている事務所や所内書類やあらゆる情報がデータ化されているかどうかで、案件獲得や業務処理において、大きな差が生じました。データ化は時間をかけてでも実現することで、経営上のリスクヘッジ及び生産性の向上にも寄与するため、今回を機にデジタル資産を増やし、事務所全体をデジタルシフトすることは重要です。

5.商圏概念の転換

直接対面の価値は向上しましたが、一方で、直接対面でなくともオンライン面談や電話相談を積極的に活用する方が増えました。事務所へ訪問せずとも専門家の意見を聞けるという文化に変化したことで、今まで遠くて話を聞くことが困難であった専門家への相談が可能になりました。対面を重視する顧客も残りますが、より専門性が高く、自身に合った専門家を全国で探すという動きは加速すると考えられます。商圏を再設定し、マーケティング戦略を再構築することが重要です。

新型コロナウイルスによって、世の中は大きく変化しました。この変化にどれだけ早く対応できるかが今後の成長戦略に大きな差を産みます。今後の経営を考える上で重要な要素をまとめさせて頂きましたので、事務所戦略を考える場合には、是非、ご参考にして下さい。

【この記事を書いたコンサルタント】

シニア経営コンサルタント 鈴木 圭介(すずき けいすけ)

2007年船井総合研究所 入社。2012年チームリーダー昇格。2016年グループマネージャー昇格。 法律事務所向けコンサルティンググループにおけるグループマネージャー。 全国で120以上の法律事務所が会員として参加されている法律事務所経営研究会主宰。 実務に精通した提案は弁護士会からも評価されており、2015年に開催された第19回弁護士業務改革シンポジウム第三部会においてパネリストを務め、福岡県弁護士会「木曜会」、岡山弁護士会においても講演実績を持つ。マーケティングに関するコンサルティングのみならず、受任率の向上や業務効率の向上、パートナー制度に伴う評価制度の構築に関するコンサルティングも行っている。

「弁護士 」カテゴリの関連記事